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10月31日の世界の昔話

しあわせの王子
イラスト 「荒駒るみ」  運営サイト Rumiの作品置き場 eRu★Art<

しあわせの王子
ワイルドの童話 → ワイルドの童話の詳細

アニメ紙芝居バージョン

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
つばめの折り紙つばめ

♪音声配信(html5)
朗読 : 目黒泉の活動のおと♪
音楽著作:フリー音楽素材 H/MIX GALLERY  効果音著作:民潭/ポケットエポックメカニワ機械庭工房

♪音声配信(html5)
朗読 : 琵琶  運営サイト : 琵琶(びわ)

♪音声配信(html5)
朗読 : 佐々木久美子

しあわせの王子

 むかしむかし、ある町には、美しい『しあわせの王子』の像(ぞう)がありました。

しあわせの王子

 その『しあわせの王子』の体には、金色に光かがやく金ぱくが貼ってあります。
 青いひとみはサファイアで、腰の剣には大きいルビーがついています。

しあわせの王子

 町の人たちは、このすばらしい王子のようにしあわせになりたいと願いました。

 冬が近づいてきた、ある寒いタ方の事です。

しあわせの王子

 町に、一羽のツバメが飛んで来ました。

しあわせの王子

「ふうーっ。ずいぶんと、遅れちゃったな。みんなはもう、エジプトに着いたのかなあ?
 今日はここで休んで、明日旅に出よう」

しあわせの王子

 ツバメはしあわせの王子の足元にとまり、そこで眠ろうとしました。

しあわせの王子

 するとポツポツと、しずくが落ちてきました。

しあわせの王子

しあわせの王子

「あれれ、雨かな? 雲もないのに、変だな。・・・あっ、王子さまが泣いている。もしもし、どうしたのですか?」

しあわせの王子

 ツバメがたずねると、王子が答えました。

しあわせの王子

「こうして高い所にいると、町中の悲しい出来事が目に入ってくるんだ。でもぼくには、どうする事も出来ない。だから泣いているんだよ」

しあわせの王子

「悲しい出来事?」

しあわせの王子

「ほら、あそこに小さな家があるだろう。子どもが病気で、オレンジが食べたいと泣いている。お母さんは一生けんめい働いているが、貧しくて買えないんだ」

しあわせの王子

「それは、お気の毒に」
「ツバメくん、お願いだ。ぼくの剣のルビーを、あそこへ運んでおくれよ」
「うん。わかった」

しあわせの王子

 ツバメは王子の腰の剣のルビーをはずして、熱で苦しんでいる男の子のまくらもとにルビーを置きました。

しあわせの王子

「つらいだろうけど、がんばってね」

しあわせの王子

 ツバメはつばさで、男の子をそっとあおいで帰ってきました。
 王子のところへ帰ってきたツバメは、ある事に気づきました。

しあわせの王子

「不思議だな。こんなに寒いのに、なんだか体がポカポカするよ」

しあわせの王子

「それは、きみが良い事をしたからさ。ツバメくん」

 次の日、王子はまたツバメに頼みました。

しあわせの王子

「ぼくの目のサファイアを一つ、才能のある貧しい若者に運んでやってくれないか?」
「でもぼく、そろそろ出発しなくちゃ」
「お願いだ。きょう一日だけだよ。ねえ、ツバメくん」

しあわせの王子

「・・・うん」
 ツバメがサファイアを運んでやると、若者は目を輝かせて喜びました。

しあわせの王子

「これでパンが買える! 作品も、書きあげられるぞ!」

 次の日、ツバメは今日こそ、旅に出る決心をしました。
 そして王子に、お別れを言いました。

しあわせの王子

「王子さま。これからぼくは、仲間のいるエジプトに行きます。エジプトはとてもあたたかくて、お日さまがいっぱいなんです」
 けれど王子は、また頼みました。

しあわせの王子

「どうか、もう一晩だけいておくれ。あそこで、マッチ売りの女の子が泣いているんだ。お金をかせがないとお父さんにぶたれるのに、マッチを全部落としてしまったんだ。だから残ったサファイアを、女の子にあげてほしいんだ」

しあわせの王子

「それでは、王子さまの目が見えなくなってしまいますよ」

しあわせの王子


「いいんだ。あの子がしあわせになれるのなら、目が見えなくとも」
「王子さま・・・」

しあわせの王子

 人のしあわせのために自分の目をなくした王子を見て、ツバメは決心しました。

しあわせの王子

「王子さま、ぼくはもう旅に出ません。ずっと、おそばにいます。そして、王子さまの目の代わりをします」

しあわせの王子

「ツバメくん。ありがとう」

しあわせの王子

 それからツバメは町中を飛び回り、貧しい人たちの暮らしを見ては王子に話して聞かせました。

しあわせの王子

「それでは、ぼくの体についている金を全部はがして、貧しい人たちに分けてくれないか」
「わかりました」

しあわせの王子

 ツバメは言いつけ通り王子の体から金ぱくをはがすと、貧しい人たちに届けてやりました。

しあわせの王子

 やがて、空から雪がまい落ちてきました。

しあわせの王子

 とうとう、冬がきたのです。

しあわせの王子

 さむさに弱いツバメは、こごえて動けなくなりました。
「ぼくは、もうだめです。王子さま、さようなら。良い事をして、ぼくはしあわせでした」

しあわせの王子

しあわせの王子

 ツバメは最後の力で王子にキスをすると、そのまま力つきて死んでしまいました。
 パチン!

しあわせの王子

 その時、王子の心臓(しんぞう)が悲しみにたえかねて、はじけてしまいました。

 次の朝、町の人たちはしあわせの王子の像が、すっかり汚くなっているのに気づきました。

しあわせの王子

「美しくない王子なんか、とかしてしまおう」

しあわせの王子

しあわせの王子

 ところが不思議な事に、王子の心臓だけはどんなにしてもとけませんでした。

しあわせの王子

 そこで王子の心臓は、そばで死んでいたツバメといっしょにすてられました。

しあわせの王子

 そのころ、神さまと天使(てんし)がこの町へやってきました。

しあわせの王子

「天使よ。この町で一番美しい物を持っておいで」

しあわせの王子

 神さまに言いつけられて天使が持ってきたのは、王子の心臓とツバメでした。
 それを見て、神さまはうなずきました。

しあわせの王子

「よくやった。これこそが、この町で一番美しい物だ。王子とツバメは、大変良い事をした。この二人は、天国に連れて帰ってやろう」

しあわせの王子

しあわせの王子

 こうして人々を助けるために死んだ王子とツバメは、天国でしあわせに暮したのです。

しあわせの王子

おしまい

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