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11月19日の世界の昔話

やさしい子どもと山の神

やさしい子どもと山の神
中国の昔話中国の情報

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

制作: ユメの本棚

 むかしむかし、中国のある村に、お母さんと子どもが二人で住んでいました。
 子どもは十二歳になった時、お母さんに言いました。
「お母さん、今までずい分お世話になりましたが、これからはわたしが働いてお母さんを助けます」
 そして次の日から子どもはお母さんにお弁当を作ってもらい、山へ仕事に行くようになりました。

 ある日の事、子どもが切り株にお弁当を置いてしばを集めていると、いつの間にか切り株におじいさんが座っていて、子どものお弁当をムシャムシャと食べているのです。
 子どもは自分のお弁当を取られてびっくりしましたが、でもニッコリ笑って言いました。
「おじいさん、とても腹が空いているんですね。どうぞ、全部食べてください」
 そして家に帰って、お母さんにその事を話すと、
「それは、良い事をしましたね」
と、お母さんは次の日、おじいさんの分もお弁当を作って持たせてくれました。
 そして子どもが切り株にお弁当を置いて仕事をしていると、またあのおじいさんが出て来て、今度はお弁当を二つともペロリと食べてしまったのです。
 それでも子どもは、やさしく笑って言いました。
「いいですよ。よほどお腹が空いていたのですね」

 次の日、子どもはお母さんと出かける用事があったので、おじいさんにお弁当を届けるためだけに山へ出かけて行きました。
 するとおじいさんが現れて、子どもに言いました。
「お前は、本当に心のやさしい感心な子じゃな。
 実はわしは、山の神なのじゃ。
 お前に今までのお礼として、良い事を教えよう。
 お前はこれから、天竺の寺へ行きなさい。
 そして天竺に着くまでにお前は、人に何かを頼まれるじゃろう。
 その頼み事を持って、寺に行くのじゃよ」
 おじいさんはそう言うと、どこかへ消えてしまいました。
 子どもは家に帰ると、その事をお母さんに話しました。
 するとお母さんは、
「それなら、すぐに天竺へ出かけないと」
と、子どもを連れて長者のところへ行き、旅に必要なお米とみそをかりました。
 その時に長者は、子どもに頼み事をしました。
「天竺の寺に行ったら、もう三年も寝たきりの娘の病が治るよう、お祈りして来てほしい」
「はい。わかりました」

 旅に出てから数日後、子どもは大きな屋敷に泊めてもらいました。
 そしてこれから天竺の寺へお参りに行く事を告げると、屋敷の主人は子どもに頼みました。
「庭の桃の木に、実がならなくなってしまったのです。どうかまた桃を売って暮らせるよう、天竺の寺でお祈りしてきてください」
「はい。わかりました」
 子どもは頼み事を引き受けると、また旅立ちました。

 しばらく行くと、橋も舟もない大きな川がありました。
 むこう岸に女の人がいたので、子どもはたずねました。
「あの、そちらへはどうやって行くのですか? わたしはこれから、天竺の寺にお参りに行くのです」
 すると女の人は川の上をふわふわ飛びながら、子どもの方へとやって来ました。
 よく見ると女の人は、顔中がはれあがっています。
「わたしは陸に千年、川に千年、海に千年生きた者です。
 長く生きて空を飛べるようになりましたが、どうしても天にのぼる事が出来ません。
 天にのぼろうと苦労しているうちに、顔がこんなにはれてしまいました。
 天竺のお寺へ言ったら、天にのぼる方法を聞いてきてください」
「はい。わかりました」
 子どもが引き受けると女の人は子どもを頭の上に乗せて、川をフワフワ飛んで向こう岸に連れて行ってくれました。
 子どもはしばらく歩いて、丘の上に立派なお寺を見つけました。
「あ、あれは!」
 このお寺こそ、天竺のお寺に間違いありません。
 子どもは大喜びで、丘をかけ登りました。
 するとお寺の前に、あのお弁当を食べたおじいさん、いいえ、山の神が立派な服を着て、にこにこと笑いながら立っているではありませんか。
 山の神は、子どもに言いました。
「ここまでよく来たね。さあ、頼み事をされたじゃろう、話してごらん」
「はい」
 子どもは長者の娘の病気の事、桃の木の事、天に昇れない顔のはれた女の人の事を話しました。
 すると山の神はうなずいて、こう言いました。
「長者の娘には、まわりにいる男たちの誰か一人にさかづきを渡すように言うのじゃ。
 さかづきを受け取った男に財産をやってむこにすれば、娘の病気はすぐに治るじゃろう。
 桃の木は、木の根元に金のつぼが二つうめてあるはずじゃ。
 それをほりおこして一つを他の人間にやれば、すぐに実がなるじゃろう。
 天にのぼれない女には、こう教えるのじゃ。
 大切にしている宝物の玉を人間にやると、すぐに天にのぼれるとな」
 言い終わると山の神は、あっという間に消えてしまいました。

 さてその帰り道、子どもは顔のはれた女の人に、宝物の玉を人間にやるよう教えました。
 すると女の人は、子どもに光り輝く玉をあげました。
 するとたちまち女の人は美しい顔になって、天へとのぼって行ったのです。
 次に子どもは泊めてもらった屋敷へ走って行くと、木の根元の金のつぼを掘り出して一つを誰かにあげるよう教えました。
 屋敷の主人がさっそく掘ると、確かに金のつぼが二つ出てきました。
 そしてその金のつぼの一つを子どもに渡すと、桃の木にはみるみるうちに桃の実が実ったのです。
 子どもは長者のところに帰ると、さかづきを娘に持たせて男の誰かに渡すよう教えました。
 もちろん渡された男には財産をやって、むこにすることも伝えました。
 それを聞いた病気の娘は弱々しい手でさかづきを持つと、さかづきを子どもに渡そうとしました。
 子どもはおどいて、
「だめですよ。わたしになど、もったいないです」
と、ことわりましたが、長者も娘も、
「ぜひとも、お願いします」
と、すすめるので、子どもはさかづきを受け取りました。
 するとそのとたん、真っ白だった娘の顔に赤みがさしました。
 そして寝たきりだった娘は起き上がると、元気に舞いを舞ってみせたのです。
 大喜びした長者は、子どものお母さんも屋敷によんでくれました。

 それから数年後、子どもは大人になると長者の娘と夫婦になり、四人で仲良く幸せに暮らしたという事です。

おしまい

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