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2月24日の日本の昔話
鼻かぎ権次(ごんじ)
鼻空當靈个權次
・日本語 ・日本語&中国語 ・日本語&客家語
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、権次(ごんじ)という若者がいました。
頭擺頭擺,有一個安到權次个後生人。
ある時、権次は仕事で船に乗って、何日も家に帰れない事になりました。
有一擺,權次因為頭路去坐船,幾下日無法度轉屋。
心配するお母さんに、権次は言いました。
權次就摎愁勞博激个阿姆講:
「大丈夫、おれは運が良いからな。・・・そうだ、運が良い証拠を母ちゃんに見せてやるよ。俺が出かけて十日たったら、家を焼いとくれ」
「無問題,𠊎運盡好。...好哪,𠊎拿兜好運个證據分你看。𠊎出去十日後,你斯放火燒屋。」
「えっ、家をかい?」
「啊!放火燒屋?」
驚くお母さんに、権次はにっこり頷きました。
權次對著驚个阿姆笑笑頷頭。
「そうさ。ちゃんと焼いておくれよ」
「係啊,你做你燒!」
権次が船に乗って海へ出て十日がたつと、お母さんは約束通り家に火をつけました。
權次坐船出海經過十日,厥姆照約束點火燒屋。
小さな家はあっという間に火事になり、すっかり燃えてしまいました。
細細一座屋一下仔,總下燒淨淨。
その頃、権次は舟の上で、くんくんと鼻をならしながら仲間に言いました。
該量時權次在船頂,用鼻空鼻阿鼻仔,摎同事講:
「あれ、今、俺の家が燃えてる。こりゃ火事だ!」
「唉哦!這下,𠊎屋下當當在該火燒屋。這係火災!」
それを聞いて、仲間たちは大笑いです。
聽著佢恁樣講,同事在該大笑。
「あははは。こんな遠く離れていて、火事がわかるもんか」
「離該恁遠,仰會有可能知發生火災?」
でも権次は、すまして答えました。
權次神投投仔應講:
「まあ、帰ってみればわかるさ」
「轉去看斯了解!」
それから何日かして、仲間たちは仕事を終えて村に帰るとびっくり。
經過幾日,該兜同事事做忒了,轉去屋下看著嗄著驚。
本当に、権次の家が燃えてなくなっているのです。
正經,權次屋下燒淨淨毋見忒了。
そして、いつ焼けたかと尋ねると、ちょうど権次が船の上で鼻をくんくんしていた日と同じだったのです。
問人幾時燒忒,堵堵好摎權次在船頂用鼻空鼻阿鼻仔講共日。
「すごい! 権次の鼻はすごいぞ!」
「了不起!權次个鼻空還靈喔!」
「よし、もう一度試してみよう」
「好,試加擺看阿仔!」
仲間たちは、村の井戸に炭を入れました。
該兜同事摎火炭放落村中个水井肚。
「よし、権次に何の匂いか当てさせよう」
「好!喊權次揣係麽个氣味。」
その様子を、旅のおばあさんが見ていました。
該情形分旅行經過个老阿婆看著。
そして村を出てから、さっきの事を思い出して笑ったのです。
所以出了村莊,想著頭下看著个事情嗄笑出來。
そこへちょうど、権次が通りかかりました。
權次堵堵經過該位。
「おばあさん、何がおかしいのかね?」
「老伯姆,有麼个事情恁先趣係無?」
おばあさんは笑いながら、権次に言いました。
老阿婆緊笑緊摎權次講:
「いや、今ね、おかしな村を通りかかったんだよ。何でも、匂いかぎの名人がいるそうで、井戸の中の炭の匂いを当てさせようと村の連中が相談したんだ。いくら匂いかぎの名人だって、井戸の中の炭の匂いがわかるもんかね」
「頭下,𠊎經過一隻盡奇怪个村莊,像形有一個鼻空當靈个名人,愛喊佢揣水井肚个火炭个氣味樣,村莊肚个人當當在該談該件事情,毋管佢鼻空有幾靈,敢有可能鼻出水井肚火炭个氣味?」
それを聞いた権次は、にやりと笑いました。
權次聽到就笑 笑講 :
「そりゃ、確かにおかしな話だ。おばあさん、面白い話を聞かせてくれてありがと」
「該確實係盡奇怪个話,老伯姆,講恁生趣个古分𠊎聽,承蒙你喔。」
おばあさんと別れた権次は、すました顔で村に帰りました。
離開老阿婆後權次,詐無事樣轉去村莊。
さてそれから、権次は井戸のそばに来るとくんくんと鼻をならして、いきなり大声で村人たちに言いました。
過後,権次行到水井脣鼻孔緊鼻,忽然間大嫲牯聲摎村民講:
「誰だ?井戸の中に炭を入れたのは」
「麼儕?摎火炭放落水井肚?」
それを聞いた村の仲間たちは、顔を見合わせて驚きました。
聽著个同事你看𠊎,𠊎看你著驚一下。
「すごい。やっぱり権次の鼻は本物だ!」
「還慶哪!佢个鼻出還靈!」
そして権次の鼻のうわさは、殿さまの耳にも入りました。
過後,權次鼻空當靈个風聲,傳到城主个耳空。
この頃、殿さまは体の調子が悪くて、とても困っていました。
堵好該下城主大人身體毋好,毋知仰般正好。
お腹が痛いと思ったら、次の日には背中、背中が治ったら今度は足、足が治ったと思ったら頭と、痛いところが体中を回っているのです。
一下肚屎痛、第二日換背囊痛,等醫好又脚痛、頭那痛。輪等痛。
殿さまは、さっそく権次を城に呼びました。
城主大人遽遽召佢去城肚。
「これ、権次とやら。そなたはたいそう鼻が良いようだな。すまないが、病気の原因を匂いで当ててみよ」
「噯!權次,你个鼻空像形當靈樣,失禮,請你鼻看阿看𠊎个病係麼个原因。」
これには、権次もまいりました。
所以,權次斯去。
でもとりあえず、殿さまに鼻を近づけてくんくんとしてみましたが、やっぱりわかるはずがありません。
佢遽遽偎兼去用鼻空去鼻,那有可能鼻得出?
「そうですな、しばしお時間を」
「係恁仰敢?分𠊎一息仔時間。」
権次はそう言って、城を出て行きました。
權次講了後,就去城外。
「こりゃ、困ったぞ。このままどこかへ逃げてしまおう」
「這擺斯慘了,走去哪位囥好哪?」
権次が山の中へ足を踏み入れると、草の茂みの向こうから、こんな声が聞こえました。
權次走落山林去个時節,聽到對面草蓬該片,傳過來有人講話。
「殿さまも、気の毒じゃなあ」
「城主大人盡衰過呢!」
「ああ、あんな病気なんて、庭のガマガエルを追い出せばすぐに治るのになあ」
「啊!著到該種病,摎天墀坪肚个蟾蜍逐出去病就好了。」
そっと覗くと、何と二人の天狗がお酒を飲みながら話しているではありませんか。
(しめた!)
恬恬偷看,該毋係有二條天狗在該啉酒、打嘴牯咩?(還好仔!)
権次はすぐに城へ戻ると、城の庭の池の周りで鼻をくんくんとさせて、大声で殿さまに言いました。
權次黏時倒轉去城肚,天墀坪肚个水窟脣鼻阿鼻,大大聲摎城主講:
「原因がわかりました! 庭のガマガエルを、今すぐ追い出してください。ガマガエルから、お殿さまの病の匂いがします」
「𠊎知原因了!這下遽遽摎天井肚个蟾蜍逐出去。蟾蜍有城主大人个病个氣味。」
それを聞いた家来たちは、すぐにガマガエルを捕まえて城の外へ追い出しました。
管家聽佢恁樣講斯遽遽去捉蟾蜍,逐出城外去。
その途端、殿さまの体はすうっと楽になったのです。
該下,城主大人个病好忒了。
「あっぱれ、あっぱれ。褒美をとらせてやろう」
「還慶哪!還慶哪!應該愛賞佢。」
こうして、殿さまに山の様な褒美をもらった権次は、そのお金で立派な家を建てて、お母さんと一緒に幸せに暮らしたのです。
城主大人賞分權次像山恁高个獎品,佢就用兜錢起一座當靚个屋,摎厥姆共下戴,過等盡幸福个日仔。
おしまい
煞了
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