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3月23日の百物語
亭主を殺されたメスのオシドリ
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むかしむかし、阿蘇村の村上にあるお城の殿さまは、狩りがとても大好きで、いつも犬を連れて山の中を歩き回っていました。
そして自慢の弓矢で、山鳥やキツネなどを射止めていたのです。
ある日の事。
今日はいつもと違って獲物が捕れず、殿さまがイライラしていると、池でオシドリの夫婦が仲良く泳いでいました。
いつもなら、こんな水鳥には目もくれないのですが、その日は獲物が一匹も捕れていない事から、
「仕方がない、今日はこれで我慢をするか」
と、弓に矢をつがえると、ヒューッと放ちました。
するとその矢は、見事にオスのオシドリの首を貫いたのです。
でも、こんな水鳥を持って帰っても仕方がないので、殿さまはオシドリをそのままにして帰って行ったのでした。
その夜、殿さまが眠っていると、殿さまの枕元で人の気配がしました。
殿さまが目を開けると、色の白いほっそりとした女が座っていて、
「食べる為ならともかく、遊びで殺生はお止めくだされ。どうかわたしの亭主を、お返しくだされ」
と、泣きながら言うのです。
殿さまは、ガバッと飛び起きると刀を手に取り、
「くせ者!」
と、刀を抜きましたが、その瞬間に、女の姿は消えてしまいました。
「ぬっ、・・・夢だったのか?」
いいえ、夢ではない証拠に、女が座っていた所がぐっしょりと濡れていて、一枚の羽が一枚落ちていました。
「オシドリの羽か・・・」
気味悪くなった殿さまは、朝になると昨日の池に行って、まだ池にいたもう一羽のメスのオシドリも一矢で射ってしまいました。
そして引き上げてみると、そのメスのオシドリは羽の中にオスのオシドリの首をしっかりと抱きかかえていたのです。
「そうか、昨日の女は、わしが殺したオスのオシドリの妻であったのか。・・・確かに、遊びで殺生をするのは良くない事だ」
殿さまはその場で自慢の弓矢をへし折ると、狩りは二度としませんでした。
そしてこの話しを聞いた村人たちは、オシドリの夫婦をとても哀れに思い、池のほとりに弁天さまをまつったそうです。
おしまい
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