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        福娘童話集 > きょうの百物語 > 5月の百物語 > 酔っ払いの化け物退治 
         
      5月7日の百物語 
        
        
       
酔っ払いの化け物退治 
     
    ・日本語 ・日本語&中国語 
     
    ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
    
     
    投稿者 : MEALabo 「MEALabo」 
      
       むかし、酒飲みの侍が酒に酔って上役を殴ってしまい、仕事をやめさせられて浪人(ろうにん)になってしまいました。 
         
「ああ、酒を飲みたいが、金がない。 
 金が欲しいが、仕事がない。 
 どこかに、良い勤め先がないかなあ」 
 浪人が京の町をぶらぶらと歩いていると、立て札の周りに人だかりがありました。  
「何事だ?」
 
 浪人が人だかりをかきわけて、立て札をのぞいてみると、 
《三十三間堂(さんじゅうさんげんどう)の化け物退治をした者には、望みのほうびをとらせる》 
と、書かれています。 
「これだ!」
 
 浪人はさっそく、御所(ごしょ→天皇のいるところ)へ出かけて役人に言いました。 
「わたしが、化け物退治をしましょう。だから先に、酒を買う金をください」 
 
 その日の夜、酒を手に入れた浪人が三十三間堂の片隅で酔っ払っていると、  
「おい、起きろ!」
 
と、ヒゲモジャの三つ目大入道が現れました。 
「こら、起きないか!」 
 大入道は浪人をにらみつけましたが、浪人は酔っ払っているので恐ろしくも何ともありません。 
 それどころか調子よく、大入道に挨拶をしました。 
「これはこれは、化け物さまでございますか。まずは、はじめまして」 
 急に挨拶をされて、大入道も面を食らった様な顔で挨拶を返しました。
 
「ああ、はじめまして。・・・お前は、わしが怖くないのか?」 
「化け物さま、何が怖いものでしょうか。わたしにとっては化け物さまよりも、上役の方がよっぽど怖い存在でした」
「・・・そうか。お前の様な変わり者は、はじめてじゃ。して、ここへは、何をしに来た」 
「はい。 
 化け物さまは聞いたところによりますと、たいそうの化け上手とか。 
 そこで、その化けっぷりを、とくとはいけんしたいと思い、ここでお待ちしておりました」 
 浪人におだてられて、大入道は機嫌が良くなりました。 
「そうか。 
 おれの化けっぷりは、それほど有名なのか。 
 オホン・・・。 
 では、ちょいと見せてやるか。 
 いくぞ!」 
 そう言って大入道は、きれいなお姫さまに化けました。 
 すると浪人は、拍手をして喜びます。
 
「おおっ、さすがは化け物さま。天下一の化けっぷりでございます」 
「そうだろう。他にも、こんなのはどうだ」
 
 浪人のおだてに、お姫さまに化けた大入道は、「トラ」、「カッパ」、「龍」、「赤鬼」など、次々に化けて見せました。 
「いや、これはおみごと! 
 うわさに勝る、化けっぷりですな。 
 ・・・しかし、化け物さま。 
 さすがのあなたさまでも、小さな梅干しには化けられないでしょうな」 
「何を言うか、見ておれよ」 
 大入道は、一粒の梅干しに化けて見せました。 
 すると浪人は、大入道が化けた梅干しをひょいとつかみ、 
「おおっ、うまそうだ。酒のあてには、これが一番」 
と、その梅干しを食べてしまいました。 
      おしまい 
         
         
         
        
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