福娘童話集 > きょうの百物語 福娘童話集 きょうの百物語 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
 


福娘童話集 > きょうの百物語 > 6月の百物語 > 幽霊の泣き声

6月4日の百物語

幽霊の泣き声

幽霊の泣き声

にほんご(日语)  ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 「櫻井園子」  櫻井園子エス代表 《櫻井園子キャンドルWEB販売》

♪音声配信(html5)
音声 琴菜 ASMR

 むかしむかし、あるところに、三太(さんた)という男がいました。
 三太には近くの村へ嫁入りをしている、およしという妹がいます。
 そのおよしが、急な病気で亡くなったのです。
 三太はさっそく嫁入り先に駆けつけて、無事にお葬式をすませました。
「やさしい妹だったのに、おれよりも先に死んじまうなんて・・・」

 その夜、三太がおよしの事を考えながら村はずれの松林まで戻って来ると、後ろの方から、しくしくと女の泣き声が聞こえました。
「はて? こんなところで、誰が泣いているのかな?」
 後ろを振り返ってみましたが、暗くてよくわかりません。
「気のせいか?」
 しばらくして歩き出すと、また後ろの方からしくしくと泣き声がします。
 それも、どうもどこかで聞いた様な泣き声です。
「あっ、あの声は。もしや、およしの声では・・・」
 しかし今さっき、およしのお葬式をすませたばかりです。
 およしはお墓に埋めたので、ここにいるはずがありません。
「ゆ、ゆ、幽霊か?」
 怖くなった三太は、そのまま後も見ずに駆け出しました。
 ところがいくら走っても、およしの泣き声が追いかけて来るのです。
「うわあああー!」
 三太は、やっとの事で自分の家に駆け込むと、そのまま気を失ってしまいました。

「三太! 一体、どうしたんだ?」
 家の人が三太を介抱すると、気がついた三太は両手で耳を押さえて言いました。
「おっ、およしの幽霊だ。ほら、ほら、しくしくと泣いてる」
「えっ?!」
 家の人は思わず耳をすましましたが、泣き声なんか聞こえません。
「何を、言っている。何も、聞こえないぞ」
「お前は妹をかわいがっていたから、そんな気がするんだ。
 さあ、風呂にでも入って、気持ちを落ちつかせろ」
「・・・そう、そうだな」
 三太は気を取り直すと、風呂に入りました。
 ところがやっぱり、泣き声が聞こえて来るのです。
 三太は風呂に入ったまま、頭をかかえ込みました。
 泣き声はだんだん近づいて来て、今度は目の前の壁の穴から聞こえはじめます。
 そればかりか、
「・・・あにさん、・・・あにさん。・・・苦しいよ、・・・さみしいよ」
と、呼びかけてくるのです。
 三太は怖くて怖くて、もう気が狂いそうです。
 ついにたまりかねて風呂から飛び出そうとすると、なんと壁の穴から細くて青白い腕がにゅうっと伸びてきて、三太の首すじをつかみました。
「ぎゃあーーーーーーーーーっ!」
 三太は大声で叫ぶと、裸のままみんなのいる部屋へ駆け込みました。
「どうした、そんなかっこうで」
 家の人が尋ねますが、三太は口をパクパクさせるばかりでしゃべる事が出来ません。
 そして頭から布団をかぶって、がたがたと震えていました。

 それから何日も過ぎましたが、三太の耳にはおよしの泣き声が聞こえ続けます。
 そこで家の人は祈とう師(きとうし→神仏においのりをする僧侶や神官)を呼んで、幽霊を追い払うおまじないをしてもらいました。
 するとそれからは、およしの声は聞こえなくなったそうです。

おしまい

前のページへ戻る


     6月 4日の豆知識

366日への旅
きょうの記念日
虫の日
きょうの誕生花
卯木(うつぎ)
きょうの誕生日・出来事
1974年 和泉元弥(狂言師)
恋の誕生日占い
責任感が強く、まじめで頭の良い優等生
なぞなぞ小学校
宝石の王様がいるところは?
あこがれの職業紹介
着物デザイナー
恋の魔法とおまじない 156
優しい心になれるおまじない
  6月 4日の童話・昔話

福娘童話集
きょうの日本昔話
少女ギツネ
きょうの世界昔話
王子と指輪
きょうの日本民話
白鳥の関
きょうのイソップ童話
ハチとシャコとお百姓
きょうの江戸小話
日本一の親孝行
きょうの百物語
幽霊の泣き声

福娘のサイト

http://hukumusume.com

366日への旅
毎日の記念日などを紹介
福娘童話集
日本最大の童話・昔話集
さくら SAKURA
女の子向け職業紹介など
なぞなぞ小学校
小学生向けなぞなぞ