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      ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) >ひゃくものがたり(百物語) >六月 
      6月4日の百物語 
          
          
         
幽霊の泣き声 
亡灵的哭声 
       
      翻訳者 広東省恵州学院  林燕敏 
       
      にほんご(日语)  ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文 
      
       むかしむかし、あるところに、三太(さんた)という男がいました。 
           很久很久以前,在某个地方有个叫三太的男子。 
         
 三太には近くの村へ嫁入りをしている、およしという妹がいます。 
 三太有一个嫁入邻近村子的妹妹叫做阿良。 
 
 そのおよしが、急な病気で亡くなったのです。 
 阿良因为突发疾病死亡了。 
 
 三太はさっそく嫁入り先に駆けつけて、無事にお葬式をすませました。 
 三太马上赶到妹妹嫁入的人家,平安无事地完成了妹妹的葬礼。 
 
「やさしい妹だったのに、おれよりも先に死んじまうなんて・・・」 
“这么善良的妹妹怎么会比我还早一步先走呢….. ” 
 
 その夜、三太がおよしの事を考えながら村はずれの松林まで戻って来ると、後ろの方から、しくしくと女の泣き声が聞こえました。 
 那天晚上,三太一边想着妹妹的事情一边在村外的松林来回踱步,从后方传来抽抽搭搭的女生的哭泣声。 
 
「はて? こんなところで、誰が泣いているのかな?」 
“奇怪了,在这样的地方,会是谁在哭呢” 
 
 後ろを振り返ってみましたが、暗くてよくわかりません。 
 三太向后方转身回头看,一片黑暗什么都看不到。 
 
「気のせいか?」 
“是我听错了吗?” 
 
 しばらくして歩き出すと、また後ろの方からしくしくと泣き声がします。 
 走了一会儿,后面还是传来抽抽搭搭的女生的哭泣声。 
 
 それも、どうもどこかで聞いた様な泣き声です。 
 而且,总感觉好像在哪里听过这样的声音。 
 
「あっ、あの声は。もしや、およしの声では・・・」 
“啊,那个哭声。似乎是妹妹阿良的哭声….” 
 
 しかし今さっき、およしのお葬式をすませたばかりです。 
 但是刚才妹妹的葬礼就已经结束了。 
 
 およしはお墓に埋めたので、ここにいるはずがありません。 
 阿良埋在墓地里,不应该在这里。 
 
「ゆ、ゆ、幽霊か?」 
“亡,亡,亡魂吗?” 
 
 怖くなった三太は、そのまま後も見ずに駆け出しました。 
 受到惊吓的三太,连后面都不看赶紧跑了出去。 
 
 ところがいくら走っても、およしの泣き声が追いかけて来るのです。 
 可是无论跑了多久,阿良的哭声还是追了过来。 
 
「うわあああー!」
 
“呜呜哇哇哇…..” 
 
 三太は、やっとの事で自分の家に駆け込むと、そのまま気を失ってしまいました。 
 三太好不容易跑进家里,之后就晕倒过去了。 
 
 
「三太! 一体、どうしたんだ?」 
“三太!到底发生什么事?” 
 
 家の人が三太を介抱すると、気がついた三太は両手で耳を押さえて言いました。 
 家里的人好好照顾三太后,意识恢复过来的三太用两手捂着耳朵说到 
 
「おっ、およしの幽霊だ。ほら、ほら、しくしくと泣いてる」 
“啊,是阿良的亡魂。你看,你看,又在抽抽搭搭的哭了。” 
 
「えっ?!」
 
“哈?” 
 
 家の人は思わず耳をすましましたが、泣き声なんか聞こえません。 
 家人不假思索地用耳朵认真倾听,可是却没有听到任何声音。 
 
「何を、言っている。何も、聞こえないぞ」 
“说什么呢,什么也没听见哦。” 
 
「お前は妹をかわいがっていたから、そんな気がするんだ。 
“你是太疼爱你妹妹了,才会有这样的感觉。 
 
 さあ、風呂にでも入って、気持ちを落ちつかせろ」 
 去吧,去泡个澡,冷静一下。” 
 
「・・・そう、そうだな」 
“应该是这样吧。” 
 
 三太は気を取り直すと、風呂に入りました。 
 三太重新振作起来,去泡澡。 
 
 ところがやっぱり、泣き声が聞こえて来るのです。 
 然而,还是会听到传来的哭泣声。 
 
 三太は風呂に入ったまま、頭をかかえ込みました。 
 三太泡着澡,双手抱头。 
 
 泣き声はだんだん近づいて来て、今度は目の前の壁の穴から聞こえはじめます。 
 哭声渐渐逼进,这次是从眼前墙壁的洞里传过来的。 
 
 そればかりか、 
「・・・あにさん、・・・あにさん。・・・苦しいよ、・・・さみしいよ」 
と、呼びかけてくるのです。 
 不仅这样,“哥哥,….哥哥….好痛苦啊…..好寂寞啊….”这样的哭唤声。 
 
 三太は怖くて怖くて、もう気が狂いそうです。 
 三太感到很恐怖,神志开始不清了。 
 
 ついにたまりかねて風呂から飛び出そうとすると、なんと壁の穴から細くて青白い腕がにゅうっと伸びてきて、三太の首すじをつかみました。 
 终于忍不住打算从泡澡盆跳起来跑出去,却被突然从墙壁的洞伸出来的又细又白的手胳膊抓住了脖颈。 
 
「ぎゃあーーーーーーーーーっ!」 
“啊--------” 
 
 三太は大声で叫ぶと、裸のままみんなのいる部屋へ駆け込みました。 
 三太大声地叫道,赤裸着身子向大家都在的屋子跑过去。 
 
「どうした、そんなかっこうで」 
“怎么了,变成这样子。” 
 
 家の人が尋ねますが、三太は口をパクパクさせるばかりでしゃべる事が出来ません。 
 家里人询问到,三太的嘴巴一张一合可就是说不出话来。 
 
 そして頭から布団をかぶって、がたがたと震えていました。 
 接着用被子把头蒙起来,咕咚咕咚地颤抖起来。 
 
 
 それから何日も過ぎましたが、三太の耳にはおよしの泣き声が聞こえ続けます。 
 这样子过了几天,但是三太的耳朵还是持续听到妹妹阿良的哭声。 
 
 そこで家の人は祈とう師(きとうし→神仏においのりをする僧侶や神官)を呼んで、幽霊を追い払うおまじないをしてもらいました。 
 于是,家里人请来法师驱走了亡魂。 
 
 するとそれからは、およしの声は聞こえなくなったそうです。 
       据说从那以后,、妹妹阿良的哭声再也没听到了。 
      おしまい 
      結束 
         
       
        
 
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