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7月26日の百物語

海の底の蛇の目傘

海の底の蛇の目傘
新潟県の民話新潟県情報

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 むかしむかし、金泉(かないずみ)という村に、釣り好きの八蔵(はちぞう)という若者が住んでいました。

 八蔵が海に舟を出して釣糸をたらしていると、海草がゆれている岩かげに一本の蛇の目傘が立てかけてあるのが見えました。
「はて? こんなところに、誰が落とした物やら」
 今と違って傘はとても高価な物だったので、八蔵は傘を拾おうと着物を脱いで海に飛び込もうとしました。
 その時です。
「しばらく、待て」
 不気味な声が、八蔵の耳に届きました。
 八蔵は辺りを見回しましたが、誰もいません。
「気のせいか」
 そしてまた海に入ろうとすると、今度は大きな声で、
「しばらく、待て!!」
と、言ったのです。
「どっ、どこだ? ・・・海の中からか?」
 八蔵が恐る恐る海の底をのぞいてみると、傘がいきなりばっと開きました。
「ひぇーー!」
 びっくりした八蔵は、懸命に舟をこいで逃げ出しました。
 そしてしばらく行った所で後ろを振り返ると、長い髪を乱した女が水面に立っており、あの傘を持って追いかけてくるのです。
「まてえー、まてえー!」
「おっ、お助けを〜!」
 八蔵は死に物狂いで舟をこいで、なんとか無事に村の岸へたどり着きました。

 翌日、八蔵は昨日の出来事を村のみんなに話しました。
 するとみんなも、驚いた顔で言うのです。
「実はおれも、あの辺で傘を持った女が長い髪をすいとるのに出くわしたぞ」
「おれが出会ったのも、あの辺だった。ひどく青い顔をしていたぞ」
「おれもだ、おれも見た」
 すると、それを聞いていた村一番の力自慢の長吉(ちょうきち)が言いました。
「よし、ならばこの長吉さまが、その青い顔の髪長女を退治してやろう」

 翌朝、長吉はたった一人で舟をこいで行きました。
「さてと、この辺かな? 蛇の目傘が出たというのは」
 長吉は海の底をのぞいてみましたが、しかし傘はありません。
「なんだ? ここじゃないのか?」
 するといきなり、青空なのに大粒の雨がざぁーざぁーと降り出して、海は高波になったのです。
「こりゃあいかん、早く岸へ戻らにゃ」
 長吉が舟をこいで岸に戻ろうとすると、波間に蛇の目傘を持った長い髪の女が現われました。
 長い髪の女は鬼の様な恐ろしい形相で、長吉に言いました。
「わしを退治するだと? この愚か者めが!」
 水面を走って追いかけてくる女に、さすがの長吉も生きた心地がしません。
「おっ、お助けを〜!」
 何とか岸へたどり着いた長吉は家へと逃げ込みましたが、それからすぐに寝込んでしまい、三日目に死んでしまったそうです。

おしまい

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