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6月12日の日本民話
立山の浦島物語
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むかしむかし、立山(たてやま→富山県の南東部)のふもとに住む木こりが山に入り、木の株(かぶ)に腰をおろしてナシを食べ始めました。
するといつの間にか、たくさんのアリが手にはい上がって来たのです。
「なんだ、こいつら」
木こりはアリを払い落としましたが、払っても払ってもはい上がってくるので、もうナシを食べる気がしなくなって谷底に投げ捨てました。
それから三年後、今日も山で仕事をしていた木こりは、なにげなく谷間(たにま)を見下ろしてびっくりです。
何と谷一面が、黄金色(こがねいろ)に光り輝いているのです。
あまりの美しさに木こりが谷へおりていくと、目の前にキラキラしたご殿(てん)が現れました。
ご殿には、《蟻王殿(ありおうでん)》と書かれてあります。
「蟻王殿? アリの王が住んでいるのか?」
木こりが驚いていると、中から美しい女の人が出てきて言いました。
「ようこそ。さあ、お入りください」
「・・・・・・」
木こりがためらっていると、
「大王さまが、お待ちかねです。さあ、どうぞこちらへ」
と、誘うので、木こりは女の人の後についていきました。
ご殿に入ると、立派な姿をした男の人が近づいてきました。
「おほん。
わたしは、アリの国の王です。
三年前、アリの国が食べ物不足で困っていたとき、あなたがナシを投げてくださいました。
おかげで、みんなの命が助かりました。
あなたは私たちの、大恩人(だいおんじん)なのです。
さあ、どうかゆっくりとおくつろぎください」
アリの大王はそう言うと、見たこともないようなごちそうを次々と運ばせました。
木こりは夢のような楽しい日々を過ごしていましたが、やがて家に帰ることにしました。
大王から、おみやげにもらった金銀の宝物を背負って家に戻ると、十日ばかりと思っていたのに、なんと五十年もたっていたという事です。
おしまい
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