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11月12日の日本民話
風呂屋の大黒さま
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むかしむかし、あるところに、お風呂屋さんとお医者さんの家が、並んでたっていました。
お風呂屋さんは毎日大勢の人が来るので、どんどんお金がたまります。
ところがお医者さんの家には、だれも治療を頼みに来ません。
「うむ。風呂屋が儲かっているのは、もしかしたら大黒さまのせいかもしれない」
そこでお医者さんは、夜中にお風呂屋さんへ忍び込むと、かざってある大黒さまを盗んで来たのです。
すると、さっそく、
「病人が出たから、来てくれ」
と、男が来ました。
「やっぱり、客が来ていたのは、大黒さまのおかげだ」
お医者さんは、大喜びで男と一緒に出かけて行きました。
ところがその男は強盗の一味で、お医者さんを人気のない所に連れ込むと、仲間の強盗と一緒に、お医者さんの薬箱から着物までを全部取っていったのです。
何とか命だけは助かったお医者さんは、裸のままで家に帰ってきました。
「ちくしょう! せっかく客が来たと思ったら、強盗だったなんて!」
考えれば考えるほど、くやしくてたまりません。
そこで腹を立てたお医者さんは、大黒さまをつかむなり、裏の竹やぶに放り投げました。
「お前なんか、何の役にも立ちやしない!」
すると竹やぶの中から、大黒さまが言いました。
「裸になるのは当たり前。わしはお風呂屋の大黒さまだ」
おしまい
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