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12月11日の日本民話 2

泳いだ焼きフナ

泳いだ焼きフナ
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 むかしむかし、親鸞上人(しんらんしょうにん)という偉いお坊さんが、信濃川のほとりのある村で仏さまの教えを広めていました。

 ある日の夕方、上人は小さな池のほとりで行われた村人たちの宴会にまねかれました。
「ささ、こんな山里で大した物はありませぬが、どうぞお召し上がり下さい」
 そう言って村人の一人が上人に差し出したのは、皿の上にのせた一匹の焼きフナでした。
「これは、ありがとう」
 上人はお礼を言いながらも焼きフナには手を付けず、お酒を飲みながら焼きフナの焦げた横腹のもようをじっと見つめています。
 そして上人は焼きフナの皿を手に突然に立ちあがると、焼きフナを池に投げ入れたのです。
 ポチャーン!
「・・・あっ!」
 村人たちが池に投げ込まれた焼きフナを見ていると、なんと焼きフナがぴくりと動いて、そのまま泳ぎ出したのです。
 驚く村人たちに、上人が言いました。
「人間とは、他の命を糧に生きるもの。
 だからあなたたちに、殺生をするなとは言いません。
 ですが、他の命を頂いて生きている事を、常に忘れてはいけませんよ」

 そして不思議な事に、この事があってからこの池に住むフナは、お腹に焼けこげた様な跡がつくようになり、村人たちはこの池を『焼きフナの池』と呼ぶようになりました。

 また、さらに不思議な事に、その時に上人が衣をかけていた大木が枯れたので太い幹を切って板にしたところ、焼きフナの形をした木目が現れたという事です。

おしまい

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