ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) > がいこくご > にほんむかしばなし 
        
        イラスト たつよ   提供 らくがきの日常 
      こそだて ゆうれい
       
           
          (日本昔話)       
      
      
 
         
        にほんご  ・ えいご  ・ はんたい ちゅうごくご ・ かんたい ちゅうごくご 
         
        にほんご&えいご ・ にほんご&はんたい ちゅうごくご ・ にほんご&かんたいちゅうごくご 
       むかしむかし、ある むら に、いっけん の アメや が ありました。       
        
               ある とし の なつ の こと、よる も おそくなった ので、アメやさん が そろそろ みせ を しめようかと おもっていると、  
         
         トントントントン  
         
        と、と を たたく おと が しました。  
         
        「はて、こんな おそく に だれ だろう?」  
         
        と、アメやさん が と を あけて みますと、ひとり の おんなのひと が たっていました。  
        
              「あの、アメ を くださいな」  
         
        「あっ、はい。しょうしょう おまち を」  
         
         アメやさん は おんなのひと が もってきた うつわ に、つぼ から みずアメ を すくって いれました。  
         
        「へい。いちもん(→30えんほど)いただきます」  
         
        「ありがとう」  
         
         おんなのひと は おかね を はらう と、きえる ように いって しまいました。 
         
         
         
         その つぎ の ひ。  
         
         きょう も アメやさん が とじまり を しようと おもっている と、また と を たたく おと が します。  
         
        「あの、アメ を くださいな」  
         
         やはり、あの おんなのひと でした。  
         
         おんなのひと は きのう と おなじ ように アメ を かう と、スーッ と、どこか へ かえっていきます。  
         
         それから まいばん、おんなのひと はよふけ に なると アメ を かい に きました。  
         
         つぎのひ も、その つぎのひ も、きまって よふけ に あらわれて は アメ を かって いくのです。  
         
         
         
         さて、ある あめ の よる。  
        
               このひ は となりむら の アメやさん が たずねて きて、いろいろ と はなしこんで いたのですが、  
         
        「あの、アメ を くださいな」  
         
        と、いつも の よう に あらわれた おんなのひと を みて、となりむら の アメやさん は ガタガタ ふるえだしたのです。  
        
              「あ、あ、あの おんな は、ひとつき ほど まえ に しんだ、まつきち の かかあ に ちげえねえ」  
         
        「えっ!」  
         
         ふたり は、かお を みあわせました。  
         
         しんだ はず の おんなのひと が、よなよな アメ を かい に くる はず は ありません。  
         
         しかし となりむら の アメや は、まちがいない と いいます。  
         
         そこで ふたり は、おんな の あと を つけてみる こと に しました。  
        
               アメ を かった おんなのひと は はやし を ぬけ、となりむら へと あるいていきます。  
         
         その ばしょは、  
         
        「はっ、はか だ!」  
         
         おんなのひと は はかば の なか に はいって いく と、スーッ と むけり の ように きえて しまったのです。  
         
        「お、おばけだー!」  
        
               ふたり は おてら に かけこむ と、おしょうさん に これまで の こと を はなしました。  
         
         しかし おしょうさん は、  
        
              「そんな ばかな こと が あるものか。きっと、なにか の みまちがい じゃろう」 
         
        と、いいました が、ふたり が あまりにも しんけん なので、しかたなく ふたり と いっしょ に はかば へ いってみること に しました。  
         
         すると、  
         
         オンギャー、オンギャー  
        
              と、 かすか に あかんぼう の なきごえ が きこえてきます。  
         
         こえ の する ほう へ いってみると、  
         
        「あっ、にんげん の あかんぼう じゃないか! どうして こんなところに?!」  
        
               おしょうさん が ちょうちん の あかり を てらしてみると、そばに てがみ が そえられています。  
         
         それに よると、あかんぼう は すてご でした。  
         
        「てがみ に よると、すてられた のは すうじつまえ。それから なんにち も たつ のに、どうして いきられたんじゃ?」  
         
         ふと みると、あの おんなのひと が まいばん アメ を かっていった うつわ が、あかんぼう の よこ に ころがって いたのです。  
         
         そして、あかんぼう が すてられた そば の はか を みると。  
        
              「おお、これ は このまえ に しんだ、まつきち の にょうぼう の はか じゃ!」  
         
         なんと ゆうれい が、にんげん の こども を そだてて いたのです。  
         
        「なるほど、それ で アメ を かい に きたんだな。それ も じぶん の むら では かお を しられているので、わざわざ となりむら まで」  
         
         きっと じぶん の はか の そば に すてられた あかんぼう を、みるにみかねた に ちがいありません。  
         
         おしょうさん は こころ を うたれて、まつきち の にょうぼう の はか に て を あわせました。  
        
              「やさしい ほとけさま じゃ。この こ は わし が そだてる に、あんしんして くだされよ」  
         
         こうして おはか に すてられた あかんぼう は、おしょうさん に ひきとられました。  
         
         それから あの おんなのひと が アメやさん に あらわれる こと は、もう にど と なかったそうです。  
              おしまい       
        
         
        
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