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3月25日の日本の昔話
酒を買いに行くネコ
去買酒个貓仔
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、ある旦那とおかみさんの間に、とても元気な七才の男の子がいました。
頭擺頭擺,有一對公婆畜一個盡有元氣正七歲个倈仔。
男の子はいつも外で遊び回り、何を着せても一日で着物を泥だらけにしてしまいます。
該個倈仔歸日在外背遊遊野野,逐日搞到一身泥滾滾。
だからおかみさんは、毎日子どもの着物を洗濯していました。
所以,女主人逐日在該洗細人仔个衫褲。
ある朝の事、おかみさんが子どもに着物を着せようとしたら、洗濯したはずの着物がひどく汚れていて、なんだかしめっぽいのです。
有一日朝晨,女主人喊厥倈仔著衫褲,本旦洗好个衫褲仰會恁屙糟,仰會濕溚溚。
いくら元気な子どもでも、夜中に出歩くわけがありません。
不管幾有元氣个細人仔,半夜乜無法度出門。
(一体、どうしてだろう?)
(到底仰會恁樣?)
そしてこんな事が何日も続いたので、怖くなったおかみさんは旦那に相談をしました。
這種情形連續幾下日,驚到會死个女主人摎老爺參詳。
「よし、わしが調べてやる」
「好!𠊎來查看!」
その晩、旦那は洗濯したばかりの子どもの着物を自分の枕元のびょうぶにかけて、眠ったふりをしていました。
該暗晡,老爺摎个厥倈仔洗身煥个衫褲掛在枕頭脣屏風頂,詐意睡忒。
すると間もなくスーッとふすまが開いて、家で飼っているネコが入って来ました。
過毋幾久,房間个紙門su~11聲打開來,屋下畜个貓仔行落來。
(なんだ、ネコか)
(麽个!貓仔?)
旦那がほっとしていると、何とネコが後ろ足で立ち上がり、びょうぶにかけてある子どもの着物を着て部屋を出て行ったのです。
男主人著一下驚,貓仔仰會用後脚企等,著該掛在屏風頂、倈仔个衫褲行出房間。
(まさか、ネコが着物を着るなんて!)
(貓仔敢會著衫褲!)
旦那はあわてて布団からはい出るとネコの後を追いかけましたが、すぐにネコを見失ってしまいました。
緊緊張張爬出棉被,跈在貓仔後背追等出去,毋過一下仔跈跌忒。
次の朝、旦那がおかみさんに昨日の事を話すと、おかみさんが言いました。
第二朝晨,男主人就摎女主人講昨暗晡个事情,女主就講:
「お前さん。ネコが年を取ると化けネコになると言うのは、本当なんだよ。家のネコも、もう年だからねえ」
「老公,有人講貓仔老會變妖精,怕係正經个!屋下該條貓仔恁多歲了!」
「じゃあ、どうする。ネコを家から追い出すか?」
「該愛仰結煞,逐出去?」
「それは・・・」
「該...」
「そうだな。長い間かわいがってきたのを、急に追い出すのもなあ」
「該啊,畜恁久了又恁得人惜,一下仔摎佢逐走,毋盼得哪!」
その日の昼過ぎ、酒屋の番頭(ばんとう)がやって来て言いました。
該下晝酒店个掌櫃來屋下講:
「旦那。たまっている酒代をもらいに来ましたよ」
「老爺,𠊎來收酒數。」
「ああ?酒代だと?わしは酒など、飲まんぞ」
「啊!?酒數?𠊎完全無食酒哦。」
「そんな事を言ったって、毎晩、子どもを使って買いに来ているではありませんか」
「雖然你恁樣講,逐暗晡喊細人仔來買酒毋係嘠?」
「そんなはずはない。何かの間違いだろう」
「無該種事情,定著有那位爭差!」
「とんでもない。旦那の子どもが毎晩来て、『とうちゃんの酒くれ、金はあとで払うから』と」
「無毋著。若細人仔逐暗晡來,講:『吾爸个酒拿分𠊎,酒錢記數下二擺正分你』」
それを聞いて、旦那はピンと来ました。
聽著該,男主人就知了。
(ははん。さては、ネコのやつだな)
(哼!夭壽貓仔揻介?)
旦那はそばで昼寝をしているネコをにらみましたが、まさかネコが子どもに化けて酒を買いに行ったとは言えません。
男主人䁯在脣頭睡當畫个貓仔,無定著貓仔變做細人仔去賒酒。
「いや、すまん、すまん。酒の事は、女房にないしょだったもんで」
「失禮,失禮,酒个事毋好分𠊎餔娘知。」
旦那はそう言って、番頭に酒代を払いました。
男主人講煞,就撿酒錢分佢。
番頭が帰ると、隣の部屋で話を聞いていたおかみさんが言いました。
掌櫃走去以後,在隔壁房間聽著个女主人就講:
「やっぱり、家のネコは化けネコだわ」
「總講,屋下該條貓仔係妖怪。」
「しかし、本当に家のネコが化けネコがどうか」
「毋過,屋下个貓仔係正經妖怪嘎?」
「決まっているじゃないですか。番頭の話と、子どもの着物が汚れていたりするのが証拠です」
「事實毋係恁樣嘎?!掌櫃講个摎細人仔个衫褲舞屙糟就係證據。」
「うむ。ではもう一度、確かめてみるか」
「m11!過看一擺,正來確定好無?」
その日の夕方、旦那は町へ行くと言って家を出ました。
該日臨暗仔,老爺講愛去街路,出門去了。
そして夜になって酒屋の物陰に隠れていたら、何と家の子どもが酒とっくりを下げてやって来るではありませんか。
暗了,就囥在酒店較暗个位所,仰會屋下个細人仔擐等酒罐來酒店呢?
とてもよく化けていて、親の目から見ても自分の子どもとしか思えません。
變著還像哪!連爺仔看又看做自家个細人仔。
(化けネコめ、今日こそ思い知らせてやる)
(妖怪貓仔,今晡日分你知吾厲害。)
子どもに化けたネコが酒屋を出ると、旦那はすぐに後を追いかけました。
變細人仔个貓仔行出酒店,老爺黏時在後背追等去。
ネコはどんどん歩いて、家ではなく村はずれの方へ進みました。
貓仔緊行,無轉屋下顛倒離開村莊。
(はて、どこへ行くのだろう?)
(到底愛行去哪位?)
そしてネコは村はずれの地蔵堂(じぞうどう)の前で立ち止まり、林の方に向かって呼びかけました。
最後行到地藏堂面前停下來,面向樹林大聲喊。
「おやじさん、酒を買ってきたよ」
「阿爸,酒買來了哦。」
すると、林の中から大きなネコが出てきて、
林肚走出一條大貓仔,
「いつもすまんのう」と、言ったのです。
講:「長透麻煩你!」
旦那は怖くなりましたが、思い切って声をかけました。
老爺驚著會死,拚死命大聲噦:
「こらっ、お前は家のネコじゃないか!こんなところで何をしている!」
「噯!你毋係屋下个貓仔嘎!在這種所在作麽个!」
そのとたんに二匹のネコはびっくりして振り返り、大あわてで林の中へ逃げ込みました。
當下兩條貓仔又嚇著斡頭看,慌慌張張走去林肚去。
そしてそれっきり旦那の家のネコは家に帰ることはなく、あの酒屋にも姿を見せなかったそうです。
自該擺以後,屋下該條貓仔無再過轉屋,乜毋識在酒店出現過。
おしまい
煞咧
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