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3月25日の小話
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自分であがる
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「フー」 ハーリ・クィン朗読館
「待て、待ちやがれ!」
盗みが見つかって旦那に追われて逃げていた泥棒が、道の真ん中に大きく開いていた穴の中にドスンと落っこちてしまいました。
「へん、ざまあみろ。これでもう逃げられないぞ」
追いかけて来た旦那が中をのぞいてみますと、それはかなり深い穴でした。
そこにちょうど、若い男がやって来たので、
「ああ、すまないが中に泥棒がいるんだ。引き上げるのを手伝ってくれないか?」
と、頼みますと、この男はニヤニヤしながら、
「そうですね。一分(いちぶ→2万円ほど)くださるなら、引き上げてやってもいいですよ」
と、言いました。
するとそれを穴の中から聞いていた泥棒が、旦那に言いました。
「旦那さま、一分もくださるのでしたら、あっしが自分であがります」
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
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