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6月2日の日本の昔話
一人になった鬼の親分
一儕人做鬼頭
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、鬼神山(おにがみやま)という山に二匹の鬼の親分が住んでいて、それぞれが大勢(おおぜい)の子分(こぶん)をひきつれていました。
頭擺頭擺,兩個鬼頭戴在安到鬼神山(Onigamiyama)个山頂,各儕都渡等歸大群个鬼子鬼孫。
親分同士の仲がよく、これまでけんかをした事がありません。
兩個鬼頭感情當好,從來毋識冤家。
ところがある日、二匹の親分が一緒に酒を飲んでいる時に片方の親分が、
毋過有一日,兩個鬼頭共下啉酒,一個鬼頭講:
「お前の子分よりも、わしの子分の方がずっと元気がええ」
と、言いました。
「𠊎个部下比你个部下還較有精神。」
それを聞いたもう一人の鬼の親分が、顔を真っ赤にして言い返しました。
另外一個鬼頭聽著恁樣講斯面紅濟炸應講:
「何を言うか!わしの子分の方が、お前の子分よりもずっと元気がええわい!」
「仰講!𠊎个部下比你个部下還較有精神哪!」
「なんだと!」
「仰般講!」
「なんだとは、なんだ!」
「仰般講,係麼个!」
「やる気か!」
「想相打係無!」
「ああ、やってやるぞ!」
「啊,想打就來打!」
二匹の鬼の親分が、同時に立ち上がりました。
兩個鬼頭同時企起來。
でも、二匹の鬼の親分の力は同じです。
但係兩個鬼頭个力都差毋多大。
けんかをすれば、両方とも無事ではすみません。
若係相打,兩儕都無保證贏。
そこで片方の鬼の親分が、もう片方の鬼の親分に言いました。
續等,一個鬼頭摎另外一個鬼頭講:
「おれたちがけんかをすれば、両方とも死んでしまうかもしれん。
「若係俚兩儕相打,無定雙方都可能會死亡。
そうなれば、子分たちのめんどうを見るやつがいなくなる。
恁樣就無人來照顧部下囉。
ここはけんかでなく、他の事で勝負をつけないか?」
這毋好用相打个方式,仰會毋用別樣方式比呢? 」
「なるほど、お前さんの言う通りだ。それなら、あのけわしい谷の上に石の橋をかけるというのはどうじゃ?」
「有影,照你講个,該來在山壢頂做一條石橋好無?」
「それは、おもしろい。
「這盡生趣。
よし、日がくれたら仕事の開始じゃ。
好,臨暗仔就開始。
朝までに石の橋をかけ、どっちの橋がよく出来ているか、わしとお前で見てまわろう」
韶朝晨以前看麼儕先做好,𠊎摎你共下試看哪。」
「わかった。もし、わしの方が負けたら、お前の弟分(おとうとぶん)になるとしよう。
その反対にわしの方が勝ったら、お前が弟分になるんだ」
「𠊎了解了。𠊎若係輸,𠊎斯做你个腳仔。
𠊎若係贏,你斯做𠊎个腳仔。」
「いいとも。決まりだ」
「當好,斯恁樣決定。」
二匹の鬼の親分は、さっそく子分たちのところへ行って、この事を話しました。
兩個鬼頭黏時去摎部下討論這件事。
さて、日が暮れると同時に、どっちの鬼たちも石の橋をつくりはじめました。
到臨暗仔兩片都開始做石橋。
「しっかりとがんばれ。負ければ、あっちの親分の家来にされてしまうぞ」
「盡命牯打拚。若係輸忒,俚會做佢兜个部下哦。」
二匹の鬼の親分は、必死(ひっし)で子分たちを追いたてます。
這兩個鬼頭都在該拚命逐厥部下。
静かだった鬼神山は、まるで戦(いくさ)の様な騒ぎです。
原旦盡恬靜个鬼神山像戰爭樣恁鬧熱。
ところが片方の橋はどんどん出来上がっていくのに、もう片方の橋はなかなか仕事がはかどりません。
但係,一條橋差毋多會做好了,另一條橋做毋得好。
東の空が白くなる頃、谷の上に一つの見事な橋が出来上がりました。
天會光了,山壢頂做好一條分人看著會發痴驚恁靚个橋。
でももう一つの橋は、まだ半分というところです。負けた鬼の親分が、勝った鬼の親分に言いました。
毋過,另外一條橋正做一半。輸忒个鬼頭摎贏个鬼頭講:
「どうやら、わしらの負けのようだ。約束通り、今日からわしはお前の弟分になろう」
「看起來𠊎兜輸忒了。照約定,今晡日開始𠊎就係你个腳仔。」
それからというもの鬼神山の鬼の親分は一人になり、その下に大勢の子分をしたがえるようになったのです。
從該量時起,鬼神山个鬼頭伸一個人,率領下背一大群腳仔。
おしまい
煞咧
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