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6月26日の日本の昔話
泥棒石
石牯賊仔
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかし、江戸の町はずれで、一人の男が泣いていました。
頭擺頭擺,在江戶城郊有一個男仔人在該噭。
そこへちょうど、名奉行で有名な大岡越前が通りかかったのです。
堵好,一個有名个奉行安著大岡越前經過。
「これ、大の男が、一体何を泣いているのだ?」
「噯,你這個大男仔人在該噭麼个?」
越前が声をかけると、男は顔を上げて答えました。
越前咄時節,該個大男仔人臥起頭應講:
「はい、わたしは油売りでございますが、今日の売り上げ金の二百文をカゴの中に入れて、石の上で一休みしておりました。
「係,𠊎係一個賣油个生理人,毋過今晡日賣著个錢二百文放落箱肚,𠊎就在石牯頂歇睏一下。
ところがいつの間にか、いねむりをしてしまいました。
毋多知一下仔,就啄目睡。
そして目覚めた時には、売り上げ金がすっかり消えていたのでございます」
等𠊎睡醒个時節,賣著个錢全部毋見忒了。」
そう言って油売りは、油の付いた手で顔をこすりながら、また泣き出しました。
恁樣講个賣油郎,用油膩膩个手捽一下面,又再過開始噭。
その話をじっと聞いていた越前は、自分の手ぬぐいを油売りに差し出して言いました。
直直在該恬恬聽个越前,拿出自家个手帕分賣油郎,講:
「ここで出会ったのも何かの縁だ。一つ、わたしが調べてあげよう。だから泣きやんで、油だらけの手と顔を拭きなさい」
「會在這堵著你盡有緣份,𠊎會調查看,毋過,毋好過噭了,油膩膩个手摎面捽淨來。」
「はい、ありがとうございます。お客さまにも、よくおつりが油で汚れていると叱られています」
「好,承蒙你,人客乜輒常罵講找个錢油膩膩。」
「そうか。まあ、油で汚れたおつりをもらっても、気持ちの良い物ではないからな。して、一休みしていて売り上げ金を盗られた石と言うのは、その石か?」
「係無﹖唉,拿著油膩膩个錢个人心情乜毋好。該,歇睏一下,賣著錢全部毋見忒个石牯,斯該垤石牯係無?」
「はい、この石でございます」
「係啊,斯該垤石牯。」
すると越前は、腕組みをしたまましばらく考えていましたが、やがて男に言いました。
過後,越前兩隻手在胸脯前交等,想一下仔,摎男仔人講:
「では、売り上げ金を盗んだのは、この石に違いない。よし、さっそくこの石を裁きにかけよう」
「照看,就係這垤石牯偷走你个錢。好,𠊎俚煞煞摎這垤石牯定罪。」
越前は、おつきの者に重い石を奉行所まで運ばせると、今から石泥棒の裁きを始めると町中にふれ回ったのです。
越前吩咐厥隨從摎這垤當重个石牯運到奉行所,並通知市民,佢愛開始審判石牯賊。
すると町の人たちは、珍しい裁きを見ようと、ぞくぞくと集まってきました。
市民擠一團,想看難得看著个判決。
「しかし大岡さまは、本当に石を裁くのだろうか?」
「但係,大岡大人正經會判石牯無?」
「もしかすると、働きすぎて頭が変になったのでは?」
「無定,忒過操勞,發癲會無?」
間もなく、石の裁判が始まりました。
無幾久,開始審理石牯。
越前は、石に向かって言いました。
越前對石牯講:
「そこの石よ、お前が油売りの金を盗んだであろう。正直に答えなさい」
「你這大石牯,偷走賣油郎个錢係無?老實講!」
しかし石が、返事をするわけがありません。
但係石牯無應。
「どうした?正直に白状して金を返せば、今回だけは大目に見てやるぞ」
「仰般?若係你老實認罪、還錢,這擺詐無看著。」
もちろん、石は何も言いません。
當然,石牯還係無應半句。
「どうして何も言わない!この越前を馬鹿にするのか!」
「仰會毋講話!你摎𠊎這個越前準做戇仔嘎!」
越前が石に向かって真面目に取り調べをするので、その様子を見ていた見物人たちは、あきれかえってくすくすくと笑いました。
因為越前認真審問該隻石牯,看著个觀眾感覺當奇怪,嗄哈哈大笑。
すると越前は、見物人たちに怖い顔で言いました。
越前面逼逼看等大家。
「裁き中に笑うとは何事だ!いま笑った者たちは、罰として三日間ろうやに入れる!」
「審判時節在該笑麼个?這下開始笑个人愛坐三日管仔!」
それを聞いて、見物人たちはびっくりです。
聽著恁樣講,圍等看鬧熱个人感覺當奇怪。
「何とぞ、お許し下さい。今後は絶対に笑ったりしません」
「講麼个?請原諒𠊎兜。下二擺絕對毋會笑了。」
それを聞いた越前は、見物人たちに言いました。
越前聽了後,摎看鬧熱个人講:
「よし、それでは今回だけは許す事にしよう。しかしその代わり、罰金として一人十二文ずつ納めるのだ」
「好,這擺就原諒你兜,但係換罰金,一儕十二文。」
そして越前は、大きなうつわに水をいっぱい入れて持って来るように命じました。
越前下令拿一隻醃缸張淰水送過來。
「さあ、このうつわの中に、罰金を投げ込むがよい。投げ込んだ者から順に、帰ってもよいぞ」
「sa11,罰金擲落醃缸肚斯好,擲落去儕做得順續轉去。」
見物人たちは罰金を入れる為に並ぶと、一人ずつ、そのうつわの中にお金を投げ入れたのでした。
看鬧熱个人為著摎罰金擲落醃缸肚在該排列仔,一儕一儕都摎錢擲落醃缸肚。
すると五人目の男が、お金を入れた時の事です。
第五個男仔人擲錢時節。
水の上に、ギラギラと油が浮き上がったのです。
水面金皙皙油鏡浮在水面頂。
それを見て、越前が叫びました。
越前看著大聲講:
「この男が泥棒だ!すぐに捕まえろ!」
「這個人係賊仔!黏時摎佢捉起來!」
五人目の男はあわてて逃げようとしましたが、すぐに役人に捕まってしまいました。
第五個男仔人慌慌張張想愛瀉走,毋過一下仔斯分官差捉著了。
そして役人が捕まえた男を調べると、ふところから油の付いたお金がたくさん出てきました。
捉著个男仔人經過調查後,當多膏著油个錢對袋仔走出來。
数えてみると、油の付いたお金は、うちわに入れた分を合わせて、ちょうど二百文ありました。
算看後,膏著油个錢,加頭先擲落醃缸肚个堵堵二百文。
越前は、油売りの男のから盗んだお金なら、必ず油が付いていると考えてこの作戦を思いついたのです。
越前認為對賣油郎該偷來个錢都會膏著油,所以採用這種方法。
取り調べると、五人目の男は寝ている油売りから売り上げ金を盗んだことを白状しました。
經過審問,第五個男仔人承認,佢從睡忒个賣油郎該偷走厥錢。
越前は油の付いた二百文を油売りに返すと、言いました。
越前摎膏著油个二百文還分賣油郎,講:
「油売りよ。盗まれた金は、これで全部戻ったな。もう悲しむ事はないぞ。それから、泥棒を見つける協力をしてくれた石に礼を言うのじゃぞ」
「賣油郎,分人偷走个錢,全部還你,毋好過傷心了哦,還愛感謝石牯幫助𠊎兜尋著賊仔哦。」
「はい。ありがとうございます」
「係哦,承蒙。」
油売りは越前と石に何度も頭を下げて、帰って行きました。
賣油郎摎越前摎石牯行禮幾下到,正行轉屋下。
「うむ。これにて、一件落着!」
「m11。這下,辦好一件事情!」
おしまい
煞咧
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