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9月26日の日本の昔話
山鳥の恩返し
長野県の民話 → 長野県情報
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
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投稿者 「癒しの森っ子」
むかしむかし、あるところに、弥助(やすけ)という親孝行の若者がいました。
とても働き者ですが、どうしたわけか家はひどい貧乏でした。
ある年の暮れ、弥助はわずかなお金を持って、お正月の買い物に町へ出かけて行きました。
すると道ばたで、何かバタバタと暴れているものがあります。
(なんだろう?)
弥助が近づくと、一羽の山鳥がわなにかかってもがいていたのでした。
「よしよし。わしが助けてあげよう」
弥助が山鳥の足にまきついているひもをほどいてやると、山鳥はうれしそうに空へ飛び立ち、そのまま山の向こうへ飛んで行きました。
「よかったな。これからは、気をつけて暮らせよ。・・・しかし、この鳥わなをどうしようか?」
弥助は、わなを仕掛けた人にすまないと思って、買い物に行くわずかなお金を全部、山鳥のかわりにわなのところへ置いたのです。
しかしこれでは、買い物に行けません。
「しかたがない。家にもどろう」
弥助は手ぶらで家にもどると、お母さんに今日の事を話してあやまりました。
でもやさしいお母さんは文句を言うどころか、弥助のしたことをほめてくれました。
「それは、いい事をしたね。今ごろ山鳥も、親のところでほっとしているだろうよ」
「ごめんよ。おら、もっと一生懸命働いて、来年はきっといいお正月にするから」
「なんのなんの。こうして二人とも無事でお正月を迎えられるだけでいいんだよ」
こうしてお母さんと弥助は、雪の降るさみしいお正月をすごしていました。
するとそこへ、美しい娘さんがやってきて、
「わたしは、旅の者です。雪に降られて、困っています。どうか、今夜一晩泊めてください」
と、言うのです。
「まあ、それはお気の毒に。こんなところでよかったら、どうぞどうぞ」
お母さんも弥助もにこにこして、娘さんをいろりのそばに座らせてあげました。
見れば見るほどきれいで、それにとても心のやさしい娘さんでした。
お母さんと弥助は、この娘さんがすっかり気に入りました。
娘さんも、この二人が好きになって、
「どんなことでもしますから、春になるまでここで働かせてください」
と、言いました。
「それなら、弥助のお嫁さんになって、ずっとここにいてくれないかい?」
娘さんは顔を赤くすると、
「・・・はい」
と、恥ずかしそうにうなずきました。
弥助もお母さんも、大喜びです。
そこで娘さんをお嫁さんにして、親子三人仲良く暮すことになりました。
お嫁さんになった娘さんは、本当に働き者でした。
家の仕事から山の仕事まで、とてもよく働いてくれます。
相変わらず貧しいのですが、幸せな毎日が続きました。
それから、何年かすぎた時です。
近くの山に悪い鬼が現れて、村を荒らしまわるようになりました。
そこで都から強い侍が、鬼退治にやってきました。
弓の上手な弥助も、侍のお供にくわえられました。
でも、いくら弓が上手でも、鬼には勝てそうもありません。
するとお嫁さんが、そっと弥助をよんで言いました。
「鬼を退治するには、ただの矢では無理でしょう。でも、山鳥の尻尾の羽をつけている矢なら、倒す事が出来ます。わたしがその羽を、用意しましょう。・・・わたしは、あなたに助けてもらった山鳥です」
そう言うと、お嫁さんは山鳥の姿に戻って、尻尾の羽を残すと空へと飛び立ちました。
そして何度も何度も家の上を回っていましたが、やがて山の向こうへ消えていきました。
弥助は、その羽を矢につけました。
そして弥助の放った矢は、たった一本で鬼を倒したのです。
喜んだ侍は、弥助にたくさんのほうびをくれました。
そのほうびのおかげで、弥助もお母さんもお金持ちになりました。
でも二人とも山鳥の姿を見るたびに、あのやさしい娘ではないかと思い、
「帰っておいで、帰っておいで」
と、涙を流しながら呼びかけたそうです。
おしまい
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