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10月24日の日本の昔話
タヌキとキツネ
むかしむかし、化けるのがとても上手なタヌキとキツネがいました。
ある日、タヌキがキツネに言いました。
「日本で一番化けるのが上手なのは、このおれさまだ」
するとキツネも、
「日本で一番化けるのが上手なのは、このあたいよ」
と、言います。
「なに! それじゃ、どっちが日本一か、化け比べをしようじゃないか」
「いいわ。じゃあ、あたいから始めるわよ」
キツネはそう言うと、タヌキの姿が見えないところまで走っていって、
「このへんでいいわ。・・・コンコンコンのコココン、コン!」
と、おまじないをとなえて、道ばたのおじぞうさんに化けてしまいました。
「さあ、キツネのやつ、何に化けたのかな?」
タヌキはキツネを探しましたが、どこにもキツネがいません。
「おかしいな、あるのはおじぞうさんだけだ。キツネのやつ、どこまで行ったんだろう? まあいい、お腹が空いたから、お弁当にしよう」
タヌキは道ばたにすわって、お弁当を広げました。
お弁当は、おいしそうなおにぎりです。
「いただきまーす」
おにぎりをぱくぱくと食べ始めたタヌキは、ふと、おじぞうさんに目をやって言いました。
「いかんいかん、自分だけ食べて、おじぞうさんにおそなえするのを忘れた。おじぞうさんも、一つどうぞ」
タヌキがおじぞうさんにおにぎりをそなえておじぎをすると、今さっきそなえしたおにぎりがもうありません。
「おや? 変だなあ」
おにぎりをもう一つあげておじぎをすると、今度は半分食べかけのおにぎりがおじぞうさんの手のひらにのっかっています。
「おや? 石のおじぞうさんが、おにぎりを食ベるはずがない。・・・ははん、さてはお前、キツネだな」
タヌキが言うと、おじぞうさんはキツネの姿にもどりました。
「あたいが化けたおじぞうさんを見破るなんて、なかなかやるわね」
「当たり前さ、あんな食いしん坊のおじぞうさんがいるものか。では今度は、おれさまがお殿さまに化けてやるよ。明日のお昼ごろ、立派なお殿さまになってお供を連れてこの道を通るから、よく見ておくれ」
「うん、明日のお昼ごろね」
タヌキとキツネは約束をすると、別れました。
次の日、キツネは朝から道ばたにすわって、タヌキの化けたお殿さまを待っていました。
でも、タヌキはなかなかきません。
「おそいわね。いつまで待たせるのかしら。なんだか、眠たくなってきたわ」
キツネが、いつのまにかウトウト眠ってしまうと、遠くの方から、
「下にー、下にー。お殿さまのお通りいー!」
と、声が聞こえてきました。
「あっ、来たわ」
キツネが起きてみると、目の前の道を立派な行列が進んできます。
カゴに乗ったお殿さまも家来たちも本物そっくりで、とてもタヌキが化けているようには見えません。
「わあ、すごい。本物そっくりだわ」
キツネはお殿さまの前へ出て行って、一生けんめい手をたたいてほめました。
ところがそれは、本物のお殿さまの行列だったのです。
「ふらちなキツネめ!」
お殿さまの家来が飛び出してくると、キツネをさんざんにたたきました。
泣きながら逃げていくキツネに、タヌキは大喜びで言いました。
「やーい、キツネ。おにぎりをぬすんだばつだよ」
おしまい
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