福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話 > たいこもちと三つ目の大入道 
      11月13日の日本の昔話 
          
          
         
  たいこもちと三つ目の大入道 
  主持人摎三隻目珠个光頭怪物 
       
      福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11) 
      
      むかしむかし、江戸でたいこもち(→たいこをたたいたり芸をして、えんかいを盛り上げる仕事)をしている富八(とみはち)が、箱根の温泉に行きました。 
          頭擺頭擺,在江戸地方个宴會主持人(用各種表演、講笑科、餘興節目使著宴會變鬧熱。)富八,去箱根温泉。  
       
      「毎日毎晩、お客のごきげんとりでクタクタだ。おれだってたまには、息抜きをしねえとな」  
      「逐日,逐暗晡,為著人客个心情做著汗流脈落,成下乜愛歇睏一下。」 
           
        さて、その帰り道の事です。 
          轉个路項个事情。  
       
      「ああー、いいお湯だった」  
      「啊,還好个溫泉。」 
           
        富八がきげん良く箱根の坂道を歩いていると、 
          富八心情當好,在箱根个山崎路行時節,  
       
        「おい、待て!」  
          と、呼び止める声がしました。 
          「噯,等一下!」  
      喊佢停下來。  
       
      「だっ、だれだ?」  
      「麼、麼人?」 
           
        振り向くとそこには、何と三つ目の大入道がいたのです。 
          斡頭看,仰係三隻目珠个光頭怪物。  
       
        なみの男なら、きもをつぶして逃げ出すところですが、富八は客あしらいのうまさで身をたてているたいこもちです。 
          普通男仔人膽就嚇爛忒、瀉走了,毋過富八係盡會服務人客出身个宴會主持人,  
       
        ちょっとやそっとでは、おどろきません。 
          雖然一滴仔得人驚,毋過還係無毋會驚。  
       
        とりあえず化け物にだまされないおまじないにと、まゆ毛につばをぬってから言いました。 
          交代首先毋好分怪物騙著,愛提防兜仔。  
       
        「よよっ、だれかと思えば、三つ目さんじゃありませんか。 
          「唉哦!話著該係麼儕,毋係三隻目珠个光頭怪物咩?  
       
        どうも、お顔が見えねえと思ったら、こんな山の中にひっこんでいたんですかい。 
          總係,感覺無面子,去這山頂囥好了。  
       
        まったく、やぼというか、物好きというか。 
          係戆抑係好奇?  
       
      いやはや、あきれたお方だ」  
      唉哦,還得人惱。」 
           
        三つ目の大入道は、富八の勢いに飲み込まれてたじたじです。 
          三隻目珠个光頭怪物,當毋著富八氣勢。  
       
      「えっ?そういうお前は、だれだったかなあ?」  
      「ed?該恁樣个你,係麼儕呢?」 
           
        「いやですな、たいこもちの富八をおわすれだなんて。 
          「還得人惱哪,毋記得宴會主持人富八。  
       
        三つ目さんも、お人が悪い。 
          三隻目珠个光頭怪物,還慘哪。  
       
        ひところは、ずいぶんとひいきにしてくださったじゃありませんか。 
          成時,你摎𠊎𢯭手當多,毋係嘎?  
       
      ねえ、そうでしょう」  
      呢,係恁樣無!」 
           
        こう言われると、知らないとは言えません。 
          分佢恁樣講後嗄做毋得講毋知。  
       
      「そうそう、富八だったな」  
      「係,係,係富八哪。」 
           
        ていさいをつくろって、むりに話を合わせました。 
          為著面子,勉強配合應話。  
       
        こうなれば、もう富八のペースです。 
          恁樣形,堵好合著富八个腳步。  
       
        (へっへへ。こいつを江戸へ連れ出して見世物小屋へ売り飛ばせば、ひともうけ出来るわい) 
          (hedhehe,這個傢伙渡去江戸,賣分做撮把戲个做得賺兜錢。)  
       
        そうたくらんだ富八は、言葉たくみに三つ目の大入道を江戸へさそいました。 
          有這陰謀个富八,嘴甜舌滑摎三隻目珠个光頭怪物騙去江戸。  
       
        「ねえ、ねえ、三つ目さんや。 
          「噯,噯,三隻目珠个先生,  
       
        こんな山の中で人をおどかしてみたところで、一文にもなりゃしないですよ。 
          在這山頂嚇人,一文錢都賺毋著。  
       
        そんなつまらない暮らしは、もうやめにしてはどうですか? 
          這種無聊个生活,好停止了仰般?  
       
        一度、花のお江戸へ来てごらんなさいな。 
          請來去繁華个江戸遶尞一擺哪。  
       
        あんたくらいめずらしいお顔をしていれば、ほうぼうからおよびがかかって、あっちからも小判、こっちからも小判、そっちからも小判と、小判小判のお山が出来ますよ。 
          若係像你恁好个面容,各處會來邀請,該片有錢、這片有錢、哪片都有錢,錢堆到像山樣恁高。  
       
        それに幽霊のきれいどころだって、ほうってはおかないよ。 
          另外,像幽靈該恁靚,無人會放等毋插。  
       
        いや、にくいね、色男。 
          唉哦,得人惱,痴哥牯。  
       
      金に女に、かー、こりゃあたまらないねえ」  
      金仔、細妹仔、車子這兜東西使人當毋著。」 
           
      「ほっ、ほんとですかい?」  
      「正、正經係恁樣?」 
           
        「この富八、うそとぼうずの頭は、ゆったことがねえのがじまんなんです。 
          「這個富八,摎光頭个頭那梳髻鬃樣,非常沙鼻毋識講過花蓼。  
       
        ささっ、けっして、けっして、悪いようにはいたしませんて。 
          絕對,絕對,毋會做壞事。  
       
      人生は誰でも一度きり、だんな、ここが人生の勝負時ですぜ」  
      逐儕一生人都會有一擺,主人,這就係人生輸贏个時節。」  
       
        富八の調子の良さに、三つ目の大入道はついつい道をいっしょにしましたが、どう考えても話がうますぎます。 
          富八个好話講盡,三隻目珠个光頭怪物跟等行,無論仰般想乜講著昶超過了,  
       
        三つ目の大入道は小田原(おだわら→神奈川)あたりまで来ると富八の話をあやしみだして、立ち止まりました。 
          三隻目珠个光頭怪物去到小田原(神奈川)就近時節,正疑狐富八个話,黏時頓恬。  
       
        「おや、三つ目のだんな。いったい、どうしたんですか?」 
          「噯,三目施主,到底發生麼个事情?」  
       
      富八が振り返ると、三つ目の大入道は人にだまされないおまじないに、まゆ毛につばをぬっていました。  
      富八斡頭看時節,三隻目珠个光頭怪物為著毋分人落著早就提防好勢了。  
        
      おしまい 
      煞了 
         
         
        
      |