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11月20日の日本の昔話
逃げた黒牛
黒牛打㪐
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
頭擺頭擺,有一個人安到吉四六先生,非常樂線。
吉四六さんのおじさんは、とても立派な黒牛を一頭持っていました。
吉四六先生个阿伯,畜一條當靚个烏牛。
ある日の事、おじさんがその黒牛を連れて、吉四六さんのところへやって来ました。
某日,阿伯牽等該條烏牛來到吉四六先生該位。
「吉四六、実は急用で町へ行く事になった。二、三日で戻って来るが、その留守(るす)の間、こいつを預かってくれないか?」
「吉四六,因為有緊急个事情,𠊎愛去街路二、三日,無在个時節這條牛搭你做得無?」
「いいですよ。どうぞ気をつけて、いってらっしゃい」
「做得啊,細義兜,一路順行。」
吉四六さんは、こころよく黒牛を預かりました。
吉四六先生好心好意照顧黒牛。
さて、吉四六さんがその黒牛を連れ出して原っぱで草を食べさせていると、一人のばくろうが通りかかりました。
吉四六先生摎牛牽到草埔去食草時節,一個牛販仔行過來。
ばくろうとは、牛や馬を売ったり買ったりする人の事です。
牛販仔就係買賣牛、馬个人。
「ほう、なかなかいい黒牛だな。どうだい、わしに十両(→70万円ほど)で売らんか」
「hou,還靚个烏牛哪,仰般,十兩(約七十萬円)賣分𠊎愛無?。」
「十両?!本当に、十両出すのか?」
「十兩?斷真出十兩係無?」
「ああ、出すとも。こいつは、十両出してもおしくないほどの黒牛だ」
「啊,係啊,這條,值得十兩个牛。」
十両と聞いて、吉四六さんは急にそのお金が欲しくなりました。
聽著講十兩,吉四六先生想愛煞煞得著該兜錢。
「よし、売った!」
「好,賣你!」
こうして吉四六さんは、勝手におじさんの黒牛を売ってしまったのです。
斯恁樣,吉四六先生斯自家決定摎阿伯个牛賣忒。
「それじゃあ、確かに金は渡したよ」
「恁樣,錢正經交分你囉。」
ばくろうが黒牛を引いて行こうとすると、吉四六さんがあわてて呼び止めました。
牛販仔想愛摎牛牽走時節,吉四六先生斯慌慌張張喊佢頓恬。
「ちょっと待ってくれ!すまんが、その黒牛の毛を二、三本くれないか」
「等一下!失禮,該條烏牛个毛留二、三支分𠊎好無?」
「うん?まあ、いいが」
「m11?好啦。」
吉四六さんは黒牛の毛を、三本ほど抜いて紙に包みました。
吉四六先生斯挷了二、三支黒牛毛,用紙包起來。
それから二、三日たって、おじさんが戻って来ました。
過二、三日後,阿伯倒轉來。
「吉四六、すまなかったなあ、黒牛を引き取りに来たぞ」
「吉四六,還失禮,來牽牛轉去囉。」
その声を聞くと、吉四六さんは大急ぎで裏口から飛び出しました。
聽著聲以後,吉四六先生煞煞對後門走出來。
そして石垣(いしがき→石の壁)の穴に牛の毛を三本突っ込み、片手を穴に差し込むと、
摎三支牛毛刺在石壁空,一隻手插落空肚。
「大変だ、大変だー!牛が逃げる!だれかー!はやく、はやくー!」
「壞了,壞蹄了!牛打㪐!有麼儕ー!遽兜、遽兜ー!」
「なに、牛が逃げるだと!」
「麼个,牛打㪐!」
おじさんはビックリして、かけつけて来ました。
阿伯著下驚,煞煞走過來。
ところが吉四六さんが石垣に手を突っ込んでいるだけで、黒牛の姿はどこにも見あたりません。
毋過,斯看到吉四六先生一隻手插落空肚,無看到牛个魂影。
吉四六さんは、おじさんの顔を見てわめきました。
吉四六先生一看到阿伯就噦︰
「おじさん、早く早く!黒牛が石垣の中へ逃げ込んだ。今、尻尾を捕まえている。駄目だ!尻尾がはずれるー!」
「阿伯,遽遽!黒牛走落石壁肚,這下抓著牛尾,當毋著,牛尾捉毋核了!」
おじさんがあわててかけ寄ると、吉四六さんは石垣から手を抜き、
阿伯慌慌張張行兼來時節,吉四六先生對石壁摎手挷出來。
「ああ、とうとう逃げられた。おじさん、かんべんして下さい。これはあの黒牛の形見(かたみ)です」
「啊,還係分佢逃走了,阿伯,請原諒,這係烏牛个紀念品。」
と、言いながら、黒牛の毛を三本渡しました。
一頭講一頭拿三支烏牛毛分佢。
おじさんが急いで石垣の裏に回ってみましたが、どこにも黒牛の姿はありません。
阿伯緊觸觸去尋看石壁裡背,毋過哪位都尋毋著黒牛个魂影。
おじさんはガッカリして、その場にヘナヘナと座り込んでしまいました。
阿伯無氣無脈,當場癱落去。
おしまい
煞咧
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