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4月6日の小話
まんじゅうのためしぎり
殿さまが、新しい刀を手に入れました。
毎日毎日、刀をながめていましたが、それにもあきてしまい、ある日家来に言いました。
「この刀で、一度ためしぎりをしてみたいものだな」
「はい。その刀なら、さぞかしよい切れ味でしょうな」
「うむ。だが、まさかふく面をして、つじぎり(→刀の切れ味を確かめる為、街頭で人を切る事)をするわけにはいかないし。
何か、良い方法はないものだろうか?」
すると、家来が言いました。
「それなら、まんじゅうを十個重ねて、お切りなさいませ。
重ねたまんじゅうの切り心地は、ちょうど人間の胴体を切ったのと同じだと申しますから」
「そうか、それではさっそく、試してみよう」
「はっ、では用意いたします」
家来は、さっそくまんじゅうを買ってくると、座敷のまん中に十個積み重ねました。
「では、お試しください」
「よし、・・・」
殿さまは大きく刀を振り上げると、『えいっ』と気合いをかけて刀を振り下ろしました。
すると見事に、たたみまで切れております。
「これはお見事!
重ねたまんじゅうを崩さずに切るとは、まことにあっぱれな名刀。
それでは、切り捨てたこの死がいは、わたくしめが、とむらってやりましょう」
家来はそう言って、まんまとまんじゅうを手に入れました。
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
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