今日の江戸小話 福娘童話集
 


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9月23日の小話

大黒さまのちえ

大黒さまのちえ

♪おはなしをよんでもらう(html5)
朗読 : 青のぷよの世界♪

 むかし、子どもたちが空地で、地面に埋まっていた大黒(だいこく)さまを見つけました。
 それを知った長屋(ながや)の家主が、子どもたちから大黒さまを取り上げると、
「ほほう。これはえんぎがいい。この空地は、わしの物。つまりこの大黒さまも、わしの物じゃ」
と、さっそくきれいに洗って床の間にかざりました。
 そして家主さんは福の神がまい込んだいうので長屋の連中を一軒のこらずよんで、祝いの酒盛りを始めました。
「且那(だんな)さん、このたびは、おめでとうございます」
「大黒さまが出てくるとは、まことにめでたい事で」
「これからは長屋を、大黒長屋とよびましょう」
 店子(たなこ→家をかりている人のこと)たちに言われて、家主さんは大変ごきげんでした。
「それ、みんなで『豊作(ほうさく)じゃ』を歌おうではないか」
 家主さんが言うと、みんなはこの頃のはやりの『豊作(ほうさく)じゃ』の歌を歌い出しました。
♪豊年じゃ、万作じゃ
♪百でお米が、三斗じゃ
♪豊年じゃ、万作じゃ
♪百でお米が、三斗じゃ
 酒に酔った連中が、手や足をふりながら踊り出しました。
♪豊年じゃ、万作じゃ
♪百でお米が、三斗五升
 酒を飲めない者たちも、手拍子をとって盛り上げました。
♪豊年じゃ、万作じゃ
♪百でお米が、四斗じゃ
♪あいやお米が、四斗五升
♪どっこい五斗じゃ、五斗五升
♪安いぞ安いぞ
♪安いがええぞい
 するとそれを聞いた大黒さまが、足元の二俵のお米をかつぐと床の間からおりて、外へ出ようとしたのです。
「もし、もし。大黒さま」
 家主はびっくりして大黒さまをつかまえると、大黒さまにたずねました。
「もし、大黒さま。何か、お心にさわりましたか」
 すると大黒さまは、気ぜわしそうに言いました。
「これ以上、値段がさがらぬうちに、わしのこの二俵を売りにいかにゃ」

♪ちゃんちゃん
(おしまい)

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