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2月17日の日本民話
カワウソの名刀
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むかしむかし、日蓮上人(にちれんしょうにん)という偉いお坊さんが、石川県金沢市の本泉寺(ほんせんじ)というお寺にやってきました。
ちょうどその時、お寺の前の川で工事をしていた村人たちが、大きなカワウソを捕まえました。
「こいつだな。水遊びをしている子どもをおぼれさせたり、お寺へ来る人たちをだましたりするのは。二度と悪さが出来ないように、ここで殺してしまおう」
村人たちは捕まえたカワウソの首に縄をかけると、カワウソの首をしめようとしました。
するとそれに気づいたお坊さんが、あわてて村人たちに言いました。
「お待ちなさい。たとえそのカワウソにうらみがあっても、生きている物の命を絶つ事はしてはならない」
「しかし、お坊さま」
「お願いじゃ。今日のところはわしに免じて、そのカワウソを逃がしてはくれないか」
「まあ、お坊さまがそうおっしゃるのなら」
村人がカワウソの首から縄をほどいてやると、命が助かったカワウソはうれしそうに川の中へ姿を消しました。
さて、その夜の事。
お坊さんが夜ふけまでお経の勉強をしていると、
♪コツコツ、コツコツ
と、部屋の雨戸をたたく小さな音がしました。
お坊さんが雨戸を開けてみると、カワウソが栗の木の皮に包んだ小さな刀を口にくわえていました。
「おや、お前さんは昼間のカワウソか? それは何じゃな。それをわしにくれるというのか?」
お坊さんがカワウソの小さな刀を手にすると、カワウソは満足そうに頭を下げて、どこかへ行ってしまいました。
あとでお坊さんがその小刀を調べてみると、それは長谷部国重(はせべくにしげ)という刀鍛冶がつくった名刀だったと言う事です。
おしまい
→ 長谷部国重(はせべくにしげ)
鎌倉時代後期から室町時代に活躍した名工。
彼の作品である圧切長谷部(へしきりはせべ)は織田信長愛用の品で国宝に指定されている。
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