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6月26日の日本民話
村をおおった大木
滋賀県の民話 → 滋賀県情報
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むかしむかし、ある殿さまのところに、ある村から手紙と一緒にたくさんの木の枝や葉っぱが届けられました。
手紙には、こう書かれています。
《村の土を掘ったところ、このような木の枝や葉がいくつもの層になって出てきました。ためしに村のはずれや川向こうの土も掘ってみましたが、どこを掘っても同じ物が出てきます。あまりにもおかしなことですので、現物(げんぶつ)をお届けいたします》
それを読んだ殿さまは、不思議に思いました。
「はて、これはどういう事だろうか?」
広い村のあちこちから同じような物が出てくるのは、おかしなことです。
そこで殿さまは家来たちに、あれこれと書物を調べさせました。
するとある古い書物に、こんな事が書いてあったのです。
そのむかし、天皇(てんのう)が重い病気になったので、御所(ごしょ→天皇の住むところ)の人たちは有名な占い師を呼んで病気の原因を占ってもらいました。
すると占い師は、
「東の方に、一本の大きな木があります。その木が、天皇にうらみをいだいているのです。木を切ってしまえば、ご病気はたちどころに治るでしょう」
と、言うのです。
大きな木は、琵琶湖(びわこ)の近くの村にありました。
その大きな木は幹(みき)のまわりが百メートルもあるという、信じられないほどの太さの大木で、村中を木かげにして天高くのびています。
御所ではたくさんの木こりを集めて、すぐにその大木を切り倒す事にしました。
ところがその大木は、切っても切っても次の日の朝には元通りの姿になっているのでした。
御所では、また占い師を呼んでたずねました。
すると占い師は、
「切った木のくずをまわりに残しておくと、木が元通りになってしまうのです。天皇をよく思わない者が、それほど強いのろいをその木にこめたのでしょう。きった木のくずを毎日残らず焼いて灰にしてしまわなければ、切り倒すことは出来ません」
と、言いました。
そこで毎日、切った木のくずを焼き捨てました。
そして七十日目にようやく大木は切り倒されて、枝や木の葉が村中に飛び散って土にうまったのです。
この木が倒れてから天皇の病気は一度はよくなりましたが、すぐにまた別の病気にかかって亡くなってしまいました。
御所で、他の占い師を呼んでたずねたところ、今度は、
「大木を切ったのが原因だ。どうしてそんなことをしたのだ」
と、言ったそうです。
おしまい
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