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11月27日の日本民話
鴻(こう)の湯の由来
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今から、千三百年以上もむかしの事です。
湯島(ゆしま)の里に、仲の良い鴻(こう→大きな鳥という意味)のツルの夫婦が巣を作っていました。
ところがある日、そのうちの一羽が足にひどいけがをしてしまいました。
けがをしたツルはとても弱ってしまい、村人たちはすぐに死ぬだろうと思っていました。
しかしけがをしたツルはヨタヨタと巣の近くの田んぼに入って行くと、そこで一晩中じっと立っていました。
「ありゃ? あの鴻のツル、あんなところで何をしているんだろう?」
近くの百姓はそれを見て、不思議に思いました。
それから何日も何日も、そのツルは夕方になると同じ場所にやって来て、一晩中そこに立っているのです。
そして不思議な事に、そこに立つようになってからツルのけがは次第に良くなり、やがてすっかり元通りになったのです。
「ありゃ? あのひどいけがが治ったぞ。これはどうしたことだ?」
百姓がツルの毎日立っていたところを調べてみると、その田んぼの中からは熱いお湯が湯気を立ててわき出ているではありませんか。
「こりゃあいい。村のみんなにも、教えてやろう」
それを聞いた村人たちは、さっそくそこに小屋をたてました。
そして仕事が終わると、毎日お湯につかりに来ました。
このお湯には不思議な力があって、疲れもよく取れるし、傷にもよく効くのです。
人々はいつしかこのお湯を、『鴻(こう)の湯』と呼びました。
今でも温泉の町で有名な城崎(きのさき)から奥に入った静かな所にある『鴻の湯』に、疲れや傷をいやしに来る人がいるそうです。
おしまい
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