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12月24日の日本民話 2
老人の魂
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むかしむかし、ある小さな漁村に住む一家は、不幸が続いて主人以外の家族がみんな死んでしまいました。
「残った人生は、死んだ家族の為に使おう」
主人は家も田畑も全部売り払うと、家族の供養のために、四国八十八ヶ所のお参りに出かけることにしたのです。
そして男が出かけてから、何十年もたちました。
村人たちは男の事をすっかり忘れてしまい、男が以前住んでいた家は、別の人が住んでいました。
そんなある日の夕ぐれ、白髪の老人が、この村にやって来て、一軒の家を懐かしそうに見つめると、
「この家は、私の家だったのに」
と、ぽつりと言って、そのままどこかへ行ってしまいました。
その後、その家の子どもたちが、原因不明の病で次々と死んでいったのです。
そこで家の者が、占い師に見てもらったところ、
「これは、以前この家に住んでいた老人のたたりですな。老人はすでに亡くなっているが、その魂はこの家にやって来て、今もうらめしそうにこの家を見ています」
と、言ったのです。
びっくりした家の者が占い師にお払いを頼むと、占い師は浜辺に行って白い丸い石を拾ってきて、その石の中に老人の魂を封じ込めたのです。
そして祠をつくると、その石を納めて、榊(さかき)を植えました。
それからは、その家に不幸な事は起こらなかったと言うことです。
その後、その祠は村の大火事(1750年)で燃えてしまいましたが、老人の魂を封じ込めた白い石だけは焼け残り、今も残っているそうです。
おしまい
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