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福娘童話集 >えとのおはなし >たつ・りゅうのお話し > ヤンニとドラゴンとお嫁さん
たつ・りゅうのお話し 第 4 話
ヤンニとドラゴンとお嫁さん
ギリシアの昔話 → ギリシアの情報
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「あーる」 【眠れる朗読】
むかしむかし、ギリシアのある所に、ヤンニという男の人がいました。
ある日の事、ヤンニが森を散歩をしていると、いきなり一頭のドラゴンが現れました。
「おいヤンニ、昼ご飯にお前を食べてやるから、覚悟しろ」
びっくりしたヤンニは、ドラゴンにお願いしました。
「まっ、待ってくれ。お願いだから、待ってくれ。ぼくのお嫁さんになる人のところへ、最後のお別れに行ってくるから」
するとドラゴンは、ニヤリと笑って言いました。
「いいだろう。ただし、必ずここへ戻って来い。でないと、お前の嫁になる女も食べてやるからな」
「うん、わかった」
ヤンニは約束すると、急いでお嫁さんになる人のところへ行きました。
「すまないが、もうお別れだ。ぼくは、ドラゴンの昼ご飯になってしまうんだ」
それを聞くと、お嫁さんになる人が言いました。
「では、わたしも一緒に連れて行ってください」
「とんでもない。そんな事をしたら、お前も昼ご飯にされてしまうよ。お前は、ここにいなさい」
「いいえ、わたしも行きます」
「・・・でも」
「わたしも行きます」
そこでヤンニは仕方なく、お嫁さんになる人を一緒に連れて行きました。
さて、ドラゴンはヤンニが女の人を連れて来たのを見て、大喜びです。
「ああ、おれの昼ご飯が、二倍になって戻ってきたぞ」
ドラゴンはヤンニとお嫁さんになる人のそばへ行くと、よだれをこぼしながら言いました。
「よく戻って来たな。さあ、さみしくないように、二人一緒に食べてやるからな」
するとお嫁さんになる人が、ドラゴンの前に両手を広げて言いました。
「まあ、なんて、おいしそうなドラゴンだこと。
わたしは朝ご飯にドラゴンを九頭も食べてきたのに、もうお腹がペコペコだわ。
でもこれで、十頭目のドラゴンを食べられるわ。
うふふふ」
それを聞いて、ドラゴンはびっくりです。
さっきの元気はどこへやら、ドラゴンはガタガタふるえながら言いました。
「ヤンニさん、お願いだから教えてくれ。この女の人は、誰の娘さんなのか」
「それは・・・」
ヤンニがもじもじしていると、お嫁さんになる人が自慢げに言いました。
「わたしは神々の王、ゼウスの娘よ。
父にもらったカミナリの力で、ドラゴンを丸焼きにしてから食べるのよ。
さあ、わたしのお昼ご飯、覚悟しなさい!」
ドラゴンはびっくりして飛び上がると、
「うぎゃーー! 助けてくれー!」
と、あともふりかえらずに、森の奥へと逃げていきました。
それを見たお嫁さんになる人は、ヤンニにニッコリほほえむと、
「あはははは。
あのドラゴンたら、わたしのうそにまんまとだまされたわ。
さあヤンニ、家に帰りましょう」
と、ヤンニの手を引いて、家に帰っていきました。
おしまい
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