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たつ・りゅうのお話し 第 2 話
お姫さまとドラゴン
スペインの昔話 → スペインの情報
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
【大人もぐっすり眠れる朗読】心あたたまる龍の昔話集 元NHKフリーアナ
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投稿者 「あーる」 【眠れる朗読】
むかしむかし、ある国に、とても立派な一人の王さまがいました。
その王さまには、三人のお姫さまがいます。
上の二人のお姫さまは、おしゃれ好きでわがままでしたが、一番下のお姫さまはお父さん思いのやさしい娘です。
ある日の事、王さまは遠い国へ旅をする事になりました。
王さまは、お姫さまたちに尋ねました。
「おみやげには、何を買ってきて欲しいんだね?」
一番上のお姫さまは、
「あたしには、金の着物を買ってきてちょうだい」
二番目のお姫さまは、
「あたしには、銀のがいとうを買ってきてね」
そして、一番下のお姫さまは、
「あたしには、バラのお花を買ってきてくださいな」
そこで王さまは遠くの国で用事をすませると、お姫さまたちへのおみやげを買う事にしました。
金の着物と銀のがいとうは、すぐに買う事が出来ました。
ところがバラの花だけは、売っている店がどこにもないのです。
「困ったな。バラの花がないと、あのやさしい姫がガッカリするだろうなあ」
でも、ないものは仕方がありません。
王さまはあきらめて、帰る事にしました。
そしてその帰る途中、森の中を通っていると、広い広い庭がありました。
その庭にはバラのしげみがあって、美しいバラの花がたくさん咲いていたのです。
「ああ、よかった。姫へのおみやげが見つかったぞ」
王さまは大喜びで、バラの花を取るために馬からおりました。
そして王さまが一番美しいバラの花を見つけて取ったとたん、目の前におそろしいドラゴンが現れたのです。
「おい! 誰に許してもらって、そのバラの花を折ったのだ!」
ドラゴンは、おそろしい顔で王さまをにらみつけます。
「わっ、わたしは、旅から帰るところですが、三人の娘におみやげを買ってやると約束をしてきました。上の二人の娘にやる金の着物と銀のがいとうは町で買う事が出来ましたが、一番下の娘に約束したバラの花だけは、手に入れる事が出来ませんでした。それでつい、この美しいバラの花を、いただこうとしたのです」
王さまが説明すると、ドラゴンは言いました。
「金の着物や銀のがいとうではなく、バラの花が欲しいとは、一番下の娘は心のやさしい娘だな。・・・よろしい。バラの花を折った事は許してやるし、そのバラの花もあげよう。そのかわり、一番下の娘をここに連れて来るのだ」
「娘を? しかし、それは」
「いいな! もし約束をやぶったら、お前の命はないぞ」
さて、王さまがお城に帰ると、上の二人のお姫さまが、さっそくおみやげをねだりました。
「お父さま、あたしの金の着物は、忘れなかった?」
「あたしの銀のがいとう、ちゃんと買ってきてくださった?」
王さまは二人に、おみやげを渡しました。
「うわ、すごい。この金の着物は、あたしの着物の中で一番きれいよ」
「この銀のがいとうは、あたしにとってもよく似合うわ」
一番下のお姫さまは、王さまの様子がなんとなく悲しそうなので、何も言わず黙っていました。
すると、王さまが言いました。
「姫、これは、お前に頼まれたバラの花だよ」
「まあ、すてき。こんなきれいなバラのお花、見た事がありませんわ」
お姫さまは、心から喜びました。
それを見て王さまもニッコリしましたが、すぐにまた悲しそうな顔をすると、自分の部屋に入ってしまいました。
それに気づいた一番下のお姫さまは、王さまの部屋に行って尋ねました。
「お父さま。どうして、そんなに悲しそうにしていらっしゃるのですか?」
「いいや、何でもないよ」
「いいえ、きっと心配な事が、おありにちがいありません。どうか話してください」
そこで王さまは、わけを話しました。
「実は、バラの花がどうしても買えなかったのだよ。帰りがけに、広い庭に咲いていたきれいなバラの花を見つけて折ったのだが、そうしたら急にドラゴンが現れて、お前を連れて来いと言うのだよ」
「ドラゴンが・・・」
「そうだ、わたしはどうすればいいのだ」
悲しむ王さまに、お姫さまは言いました。
「ご心配なく、お父さま。あたし、ドラゴンのところへ参ります」
「しかし、お前にもしもの事があったら」
「いいえ。あたしに何かがあってもこの国は大丈夫ですが、国王でいらっしゃるお父さまに何かがあっては、この国は大変な事になりますから」
次の朝、王さまとお姫さまは、馬に乗ってドラゴンのいる庭に出かけました。
けれども、そこには誰の姿もありません。
そこで王さまとお姫さまは庭を通って、立派なご殿の中に入っていきました。
中に入っても誰もいませんでしたが、食堂のテーブルの上には二人の為に用意したと思われる、とてもすばらしいごちそうが並んでいました。
二人はお腹がペコペコだったので、喜んでごちそうになりました。
それから庭に出てしばらく散歩をしましたが、やはり誰もいません。
そして夕方になって二人がご殿に戻ると、食堂のテーブルには、またすばらしいごちそうが並んでいました。
二人が夕食をすませて寝室に行くと、ちゃんとべッドの用意も出来ていました。
あくる朝、目を覚ました二人が食堂へ行くと、おいしそうな朝食が用意されていました。
朝食を食べ終えると、王さまは目に涙を浮かべて言いました。
「姫よ。わたしはもう帰らねばならない。かわいそうだが、お前はここに残っておくれ」
「はい、お父さま。心配なさらないでね」
お姫さまは笑顔で王さまを見送りましたが、でも王さまが行ってしまうと、お姫さまは、わっと泣き出しました。
これから先、自分がどうなるのかと思うと、怖くてたまらなかったのです。
しばらくしてお姫さまは、また庭へ散歩に行きました。
すると突然、あの恐ろしいドラゴンが目の前に現れたのです。
お姫さまはまっ青になって、逃げだそうとしました。
するとドラゴンが、とてもやさしい声で言ったのです。
「怖がらないでください。ぼくはあなたに、お嫁さんになってもらいたいと思っているのです。ぼくのお嫁さんになると、約束してください」
「いいえ、そんな事は出来ないわ」
お姫さまは、こんな恐ろしいドラゴンのお嫁さんになる気はありません。
けれども、ドラゴンと一緒にお昼を食べたり、夕ご飯を食べたりしているうちに、だんだんとドラゴンの事が好きになってきました。
それにドラゴンが、何度も何度も、
「お嫁さんになってください。幸せにしますから」
と、頼むので、心のやさしいお姫さまはつい、
「はい。お嫁さんになります」
と、言ってしまったのです。
あくる朝、お姫さまが食堂に行くと、そこにはすでに一人の美しい王子さまがいました。
王子さまはニッコリ微笑むと、お姫さまに言いました。
「おはよう。ぼくのお嫁さん」
お姫さまは、ビックリして尋ねました。
「あの、あなたはどなたですか?」
「ぼくの声を忘れましたか? ぼくはドラゴンです。ぼくは昨日まで、魔法をかけられてドラゴンになっていました。誰かがぼくのお嫁さんになると約束してくれれば、魔法がとける様になっていたのです。心やさしいあなたのおかげで、この通り、ぼくは元の人間に戻れました。ありがとう。本当にありがとう」
美しい王子は、お姫さまに心からお礼を言いました。
まもなく二人は立派な結婚式をあげて、幸せに暮らしたということです。
おしまい
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