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2月10日の世界の昔話

ウィリアム・テル

ウィリアム・テル
スイスの昔話 → スイスの国情報

 むかしむかし、今から五百年以上も前の、スイスでの出来事です。
 そのころスイスは、となりの国のオーストリアのものでした。
 どこヘいっても、オーストリアの兵士がいばっています。
 スイスの人たちは、一日もはやく、自分たちだけの国にしたいとのぞんでいました。
 オーストリアでは、そんなスイスの人たちの自由をのぞむ気持ちを知ると、ますますきびしくなり、少しでもオーストリアの悪口をいうと、ろうやに入れられてしまうのです。
 ある時、オーストリアから、ゲスラーという役人がやってきました。
 ゲスラーは、とてもいじわるな人でした。
 ゲスラーは町の広場のまん中に長い棒をたてて、その上にひとつのボウシをかかげさせました。
 棒の横のたてふだには、
『このボウシは、オーストリア皇帝のボウシである。ボウシのまえを通る時は、かならずおじぎをすること。おじぎをしないものは、すぐ死刑にする』
と、書いてありました。
 町の人たちはしかたなしに、ボウシにおじぎをしました。
 そこへウィリアム・テルという、森にすむ猟師が、六つになる息子をつれて通りかかりました。
 テルは、スイスの自由をのぞんでいる一人です。
 テルは、ボウシとたてふだを見ても、
(ここはスイスだ。オーストリア皇帝のボウシに、おじぎをすることはない)
と、そのまま通りすぎようとしました。
 するとすぐに見張りの兵士につかまって、ゲスラーのまえにつれていかれました。
「なぜ、ボウシにおじぎをしないのだ?」
「わたしは、スイス人ですから」
「何っ?」
 テルの答えに、ゲスラーはどなりました。
「すぐに死刑にしてやる! ・・・いや、まてよ」
 ゲスラーは、テルのそばにいるテルの息子に気がついて、ニヤリと笑いました。
「死刑はゆるしてやろう。そのかわり、そこにいる息子の頭の上にリンゴをのせて、遠くからそのリンゴを矢でおとすのだ。いいな」
 いじわるなゲスラーらしい、思いつきでした。
「さあどうした。自分のうでに自信がないのか? やらないのなら、おまえも子どもも死刑だ!」
 テルは決心しました。
 息子を木の下にたたせて、頭の上にリンゴをのせると、自分は二本の矢をとりました。
 緊張(きんちょう)のあまり、弓矢を持つテルの手がふるえています。
 それを見た息子が、遠くの木の下からテルにさけびました。
「お父さん、ぼくはだいじょうぶだよ。こわくないよ。だって、ぼくのお父さんは、スイス一の弓の名人だもの」
 息子の言葉に勇気づけられたテルは、弓に矢をつがえると、ねらいをさだめて手をはなしました。
 ビューン!
 矢はまっすぐにとんで、みごとリンゴのまん中をうちぬきました。
 まわりで息をひそめて見ていた人たちから、「ワアーッ!」というかん声があがりました。
「テル、バンザーイ。スイス一の弓の名人、バンザーイ」
 おもしろくないゲスラーは、テルにむかっていいました。
「よくやった。だが、なぜ矢を二本とったのだ?」
「もし、一本目を失敗して、息子を死なせたら、もう一本で、あなたをねらうつもりでした」
「なんだと!」
 正直にこたえたテルは、すぐにつかまえられました。
 でも、ろうやにいくとちゅうでうまくにげ出して、ぶじに息子のもとへ帰ったので、テルはますます人気者になりました。
 やがてスイスはテルたちのはたらきで、スイス人たちの国になったのです。

おしまい

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