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6月20日の日本の昔話
十七毛ネコ
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作 : 妖精が導くおやすみ朗読チャンネル
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投稿者 「眠りのねこカフェ」
むかしむかし、吉四六(きっちょむ)さんと言う、とてもとんちが上手な人がいました。
吉四六さんは面白いアイデアで、お金儲けをするのが得意な人です。
ある時、吉四六さんは、町でこんな話しを聞きました。
「オスの三毛ネコ(→ネコの毛色で、白・黒・茶の三色の毛が混じっているネコ)を船に乗せておくと、どんなにひどい嵐にあっても決して沈む事がない。
それで船乗りたちはオスの三毛ネコを見つけると、良い値段で買い取るんじゃ。
何しろメスの三毛ネコはいくらでもおるが、オスの三毛ネコは、めったにおらんからのう」
それを聞いた吉四六さんの頭に、お金儲けのアイデアが浮かびました。
(そういえば、わしの家にオスの三毛ネコがいたな。こいつを使えば、一儲け出来るぞ)
そこで吉四六さんは、さっそく浜の船乗り場へ行くと、大きな声でこんな一人言を言いました。
「この辺には、オスの三毛ネコがたくさんおるのう。
だがわしの家にいる様な、十七毛のオスネコはさすがにおらんのう」
すると一人の船乗りが、吉四六さんに声をかけてきました。
「十七毛のネコとは、珍しいな。吉四六さん、そのネコを譲ってはくれんか?」
しかし吉四六さんは、わざと渋い顔で言いました。
「いや、売るわけにはいかん。何しろ十七毛のオスネコは、わしの家の宝物じゃ」
そう言われると船乗りは、ますます十七毛のネコが欲しくなりました。
「それなら吉四六さん。お礼に五両を出そう、どうだ?」
「まあ、それほどに言うのなら仕方あるまい。売る事は出来んが、しばらく貸してやろう」
「それは、ありがたい。
ちょうど明日から、大事な仕事があるんだ。
じゃあ明日の朝に、吉四六さんの家へ取りに行くよ」
さて翌朝、船乗りは吉四六さんの家へやってくると、財布からお金を取り出して言いました。
「大事な宝物を借りるのだから、ただでは申し訳ない。お礼に、この一両を受け取ってくれ」
「はい、せっかくのおこころざしですから、ありがたく頂きましょう。では、オスの十七毛ネコを連れてきますでな」
そう言うと吉四六は、家の火鉢の横で寝ていた汚い三毛ネコを抱きかかえてくると、船乗りに渡しました。
受け取った船乗りは、不思議そうな顔で吉四六さんにたずねます。
「吉四六さん。このネコはどう見ても、普通の三毛ネコに見えるのだが」
すると吉四六さんは、にんまり笑って説明をしました。
「確かに、こいつはオスの三毛ネコじゃ。だがこのあいだ、火の残っているかまどにもぐり込んで、背中をちょいとヤケドしました。つまり、八毛」
「しかし吉四六さん。三毛と八毛を足しても、十一毛にしかならんぞ。十七毛には、まだ六毛が足らんのではないか?」
「いやいや。尻の毛が、むけておるでしょう。毛が無いので、つまり無毛(六毛)。三毛と、八毛と、六毛を全部合わせると、十七毛ですよ」
「なるほど。確かにこいつは、三毛と八毛と六毛で、十七毛ネコだ」
船乗りは吉四六さんのとんちに感心すると、ほかの船乗りにも同じ話しで自慢してやろうと、その十七毛ネコを喜んで持って帰りました。
おしまい
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