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    福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話 > ハチの恩がえし 
      9月2日の日本民話 
          
          
         
  ハチの恩がえし 
  栃木県の民話 → 栃木県情報 
       むかしむかし、那須与一(なすのよいち)という、弓の名手(めいしゅ)がいました。 
   与一(よいち)は源氏(げんじ)の武士(ぶし)で、平家(へいけ)と戦った屋島の合戦(やしまのかっせん)のとき、海にのがれていた平家の小舟にたてた扇(おおぎ)の的(まと)を、たった一本の矢で射落(いお)としたのです。 
   あまりの見事さに、このときは敵も味方も関係なく、大歓声(だいかんせい)がわきあがったそうです。 
   このとき与一は、二十歳の若者でした。 
   さて、この与一は下野の国(しもつけのくに→栃木県)にいた幼いころから、弓の腕をみがいていました。 
   あるとき与一は、弓を持って那煩野(なすの)の原へ、一人で狩りにでかけました。 
   すると、ススキのやぶの中にはられたクモの巣(す)に、一匹のハチがかかってもがいていたのです。 
   葉っぱのかげには大きなクモがいて、獲物(えもの)が動かなくなるのをジッと待っています。 
   ハチをかわいそうに思った与一は、弓の先でクモの巣をやぶってハチを逃がしてやりました。 
   それから何日かたって、与一はまた弓を持って、那須野の原にでかけていきました。 
   ススキをわけいっていくと、やぶの中に子どもが一人で立っています。 
   子どもはにこやかな顔で、与一にふかぶかと頭を下げていいました。 
  「このあいだは、命をお助けくださってありがとうございました。父がお待ちしております。ぜひ、うちへお立ちよりください」 
  「このあいだとは?」 
   なんの事かと思いましたが、与一はハチを助けたことを思いだしました。 
   まさかとは思いましたが、与一は子どもに案内されるまま、ススキのやぶをわけながらついていったのです。 
   すると、これまで何度も足をふみいれたことのあるやぶの奥に、美しい赤い門がたっていて、金銀をちりばめたようにかがやく宮殿(きゅうでん)があったのです。 
   宮殿の中に通されると、頭にかんむりをのせて、きらびやかな衣をまとった老人が待っていました。 
  「来てくれてありがとう。この子はわたしの子です。あなたの助けによって命をすくわれました。恩返しのお礼をさしあげたいとぞんじます。これは、わが家につたわる宝物で、この矢で射(い)れば、あなたは天下(てんか)に名をあげることができるでしょう」 
   そういって、与一に一本の矢を手わたしました。 
   与一は矢をもらって黄金の宮殿をあとにし、ふと門をふりかえってみると、黄金の宮殿もりっぱな赤い門も、まぼろしのように消えていていたのです。 
   与一がのちに、屋島の合戦で平家の小舟の扇の的を射たのは、このときハチにもらった矢だったという事です。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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