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    福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話 > お菊ののろい 
      10月7日の日本民話 
        
           
  お菊ののろい 
  群馬県の民話 → 群馬県情報 
       むかしむかし、上州(じょうしゅう→群馬県)に、小幡上総介(おばたかずさのすけ)という侍(さむらい)がいました。 
   とても短気で乱暴な男でしたが、お菊(きく)という美しい女中(じょちゅう)をとても気に入っていました。 
   ある朝、上総介(かざさのすけ)がお菊の運んできた朝ご飯を食べようとしたとき、ご飯の中に何やらキラリと光るものが入っていました。 
   はしでつまみ出してみると、何とそれは、一本のぬい針だったのです。 
   上総介は怒りでからだをふるわせると、お菊につかみかかって問いただしました。 
  「この恩知(おんし)らずめ! よくもわしを殺そうとしたな。どうしてこんなことをしたのじゃ!」 
   まるで身に覚えのないお菊でしたが、上総介に何度も何度も殴りつけられて、いいわけをするひまもありません。 
   そのようすをおもしろそうに見ていた奥さんが、言いました。 
  「この女は、性根の曲がった頑固者(がんこもの)です。殴ったぐらいでは白状しますまい。どうです、ヘビ責(ぜ)めになさっては」 
  「よし、そうしよう」 
   お菊は裸にされて、お風呂の中に、たくさんのヘビと一緒(いっしょ)に投げこまれました。 
   お風呂の水がだんだん熱くなると、苦しくなったヘビがお菊にかみつきます。  
   地獄のような苦しみの中で、お菊は、 
  「このうらみ、死んでもはらしてくれようぞ!」 
  と、言い残して、ついに死んでしまったのです。 
   それから何日かして、奥さんは体中をハリでさされる痛みにおそわれて、寝こんでしまいました。 
   医者をよびましたが、まるで原因がわかりません。 
   何日も何日も苦しんだすえに、 
  「お菊、許しておくれ、針を入れたのはこの私じゃ。上総介に可愛がられるお前がにくかったのじゃ」 
  と、言うと、そのまま死んでしまいました。 
   上総介は本当のことを知って、死んだお菊にあやまりましたが、いまさらお菊は許してくれません。 
   その夜から、上総介の屋敷にお菊の幽霊(ゆうれい)が出るようになったのです。 
   家来や女中たちは怖がって逃げてしまい、一人きりになった上総介は、何度も何度もお菊にあやまりながら死んでいったのです。 
   その後、小幡家の人々によって、お菊のためにお宮が建てられました。 
   それからは、お菊の幽霊は現われなくなったという事です。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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