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5月31日の日本の昔話
五分次郎
鳥取県の民話 → 鳥取県情報
むかしむかし、子どもがいない、おじいさんとおばあさんがいました。
二人は毎日、観音さまにお願いをしました。
「小さくても構いませんから、子どもを授けてください」
そんなある日、おばあさんの左手の親指が急に大きくなりました。
そしてそれから七日後に、おばあさんの左手の親指からポロリと小さな小さな男の子が生まれたのです。
男の子の大きさは、一寸(いっすん)の半分の五分(ごぶ→約1.5センチ)くらいでした。
虫の様に小さな男の子でしたが、おじいさんとおばあさんは大喜びです。
「観音さまが、願いをかなえてくださったぞ!」
「五分しかないから、五分次郎と名付けましょう」
この五分次郎は小さいながらも、元気いっぱいに育ちました。
ある日の事、五分次郎がささの葉に乗って、ようじをさおに川で遊んでいると、突然、海からやって来た大きな鯛(たい)にぱくりと飲み込まれてしまったのです。
「あれ? 魚に飲み込まれてしまったぞ。・・・まあ、いいか。そのうちどうにかなるだろう」
五分太郎はのんきにも、大鯛のお腹の中で昼寝をはじめました。
その大鯛はやがて漁師のアミにかかって、魚屋の調理場に連れて行かれました。
魚屋が大鯛のお腹を切ると、五分次郎は、
「今だ〜!」
と、元気よく飛び出しました。
それから何日も旅をして、五分次郎は鬼ヶ島へ行ったのです。
五分次郎が岩の上からながめていると、鬼たちが赤鬼と青鬼に分かれて、戦いのけいこをしています。
五分次郎は、おもしろがって、
「赤が勝ったぞ。今度は青が勝った」
と、はやしたてました。
それを聞いた鬼たちは、
「いったい誰だ。けいこをじゃまするのは!」
と、五分次郎を見つけたのです。
鬼の親分は、五分次郎をつまみ上げると、
「なんだ、この小さな小僧は? 虫か? 腹の足しにもならんが、こうしてくれるわ」
と、口の中へポイと放り込んだのです。
「ああ、また食べられちゃった」
鬼のお腹に入った五分次郎は、あわてる事なくようじを取り出すと、
胃袋をチョン!
おへそをチョン!
のどをチョン!
と、突き回りました。
五分次郎を飲みこんだ鬼の親分は、目を白黒させて、
「うわあ、痛い! 痛い!」
と、大騒ぎです。
すると鬼の子分たちは、親分のお腹の中にいる五分次郎に向かって叫びました。
「おい、宝物をやるから、親分の体から出て来い!」
「本当か! だますつもりじゃないだろうな!?」
「本当だ! 鬼は約束を守る!」
すると五分次郎は、鬼の親分の鼻からピョーンと飛び出しました。
「さあ、約束通り、宝物をもらうぞ!」
すると鬼たちは馬と宝物を用意して、馬の背中に宝物を積んでやりました。
こうして鬼の宝物を手に入れた五分次郎は馬に乗って、おじいさんおばあさんの待つ家に帰って行ったのです。
おしまい
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