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6月23日の日本の昔話
なぞかけ姉さま
福井県の民話 → 福井県の情報
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作 : 妖精が導くおやすみ朗読チャンネル
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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
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投稿者 「きべだよ。」
むかしむかし、男前(おとこまえ)の若者が、お伊勢(いせ)参りに出かけました。
お伊勢まいりをすませて茶店で一休みしていると、絵から抜け出したような美しい姉さまが、同じ茶店に立ち寄りました。
(はあー。世の中には、これほどきれいな姉さまがいるのだな)
若者は、しばらく見とれていましたが、
「いかんいかん、早く今夜の宿(やど)を探さないと、日が暮れてしまう」
と、町はずれのはたご屋(→旅人のための宿)にわらじを脱ぎました。
すると同じはたご屋に茶店で見かけたあの姉さまが入ってきて、若者の隣の部屋に通されたのです。
「あんなきれいな姉さまと、同じはたご屋で泊まりあわせるとは、なんと言う幸運。
これだけでも、お伊勢参りに来たかいがあったわ。
しかし、どこのお人だろう。
せめて名前だけでも知りたいものだ」
その夜、若者は胸がドキドキして、なかなかねつけませんでした。
あくる朝、若者は寝坊してしまいました。
隣の部屋の姉さまは、もうはたご屋を出た後です。
「ああっ、なんたる事だ。あのような美しい姉さまには、もう二度と会えんだろう」
若者はがっかりしながら出発し、次の宿場のはたご屋に泊まったところ、何と隣の部屋にあの姉さまがいるではありませんか。
「これは、お伊勢さまのお引き合わせに違いない。よし、明日の朝は早起きして、姉さまに名前を聞かせてもらおう」
若者は姉さまの事ばかり考えて、この晩もなかなか寝つけませんでした。
次の朝、またもや寝坊した若者があわてて隣の部屋を訪ねてみると、もう姉さまの姿はありませんでした。
「ああっ、一度ならず二度までも・・・」
若者がガックリしていると、はたご屋の番頭(ばんとう)がやってきて言いました。
「お客さま。この部屋に泊まった娘さんから、これを渡すように頼まれました。
「なに、姉さまが!」
若者が手紙を広げてみると、
《恋しくば、たすねきてみよ十七の国。
トントン町のその先の、くさらぬ橋のたもとにて。
夏なく虫の、ぼたもちが待つ》
と、書いてありました。
「はて、なんじゃ、こりゃ? なぞなぞの歌のようだが、さっぱりわからん」
若者がいくら考えても、この歌に込められた意味がわかりませんでした。
それでも、あの姉さまからもらった大事な手紙です。
若者は村へ持って帰ると、その手紙を大切にしまいました。
「あーぁ、姉さまに会いたいな。歌の意味を読み解いて、姉さまに会いたいな」
あれから何日もたちましたが、若者は姉さまの事が忘れられません。
その想いは、日に日に増す一方です。
そんなある日、旅の坊さんが村を通りかかったので、若者は姉さまからもらった手紙を読み解いて欲しいと頼みました。
するとさすがは、物知りの坊さんです。
坊さんは手紙を読むと、若者にこう言いました。
「いいかね。
十七の国とは、年の若い国だ。
つまり、若狭(わかさ→福井県)の国じゃ。
そしてトントン町とは、おけを作っている町の音だから、これはおけ屋町じゃ。
くさらぬ橋とは、石の橋。
夏なく虫といえば、セミ。
ぼたもちは、おはぎの事じゃ。
つまり、こうじゃ。
『恋しいなら、若狭の国へ訪ねて来てください。おけ屋町の先の石橋のたもとにある、蝉屋(せみや)のおはぎが待っていますよ』
よかったの。
お主のいとおしいおはぎさんが、待っておるぞ。
はやく、訪ねてゆきなされ」
「ヨッシャアーー!」
若者は大喜びで村を飛び出すと、若狭の国のおけ屋町の先の石橋のたもとにある、『蝉屋』という大きな店に、おはぎさんを訪ねました。
すると店の中から、あの姉さまが出て来たのです。
「あなたさまが来るのを、今か今かと待っておりました。さあ、おあがりくださいな」
その後、若者は、おはぎさんと両親に迎えられ、めでたくお婿さんになりました。
おしまい
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