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6月23日の日本民話

カメの恩返し

カメの恩返し
滋賀県の民話滋賀県情報

日本語 ・日本語&中国語

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

制作 : 果実乃ゐと Kamino Ito

 むかしむかし、近江の国(おうみのくに→滋賀県)に、一人の貧乏な男が住んでいました。
 男にはよく働くお嫁さんがいて、お嫁さんは人にやとわれてはたをおって暮らしを助けていました。
 お嫁さんは仕事の合間のわずかの時間を利用して、自分の布をおっていました。
 しかし仕事の合間するので、なかなか布が仕上がりません。
 長い長い時間がかかりましたが、お嫁さんはやっと一反(いったん→着物一人分の布)だけおりあげることが出来ました。
 お嫁さんはその布を家に持って帰って、男に言いました。
「この布を魚と、取り替えてきていただけませんか?」
「魚と?」
「はい、琵琶湖(びわこ)のほとりの矢橋(やばせ)には漁師が大勢いて、魚を取ってくれるそうです。
 そこへ行って、魚と取り替えてきてください。
 その魚をイネモミと取り替えて、来年から田んぼを作ろうではありませんか。
 そうすればきっと、暮らしが良くなるでしょう」
「それは、良い考えだ」
 男はさっそく布を持って、矢橋に出かけました。
 そして漁師にあみをひいてもらいましたが、運の悪い事に魚は一匹もかかりません。
 ただ大きなカメが、一匹かかっただけです。
「ちえっ、一匹も取れねえ」
 漁師は腹立ちまぎれに、そのカメをたたき殺そうとしました。
 それを見た男は、カメが可哀想になって言いました。
「待っておくれ、そのカメをもらうよ。この布でそのカメを買うよ」
「えっ? このカメでいいのかい?」
「ああ、目の前で殺されるのはしのびない」
 漁師は大喜びで布をもらって、カメを男に渡しました。
 男はカメを両手でかかえて、
「カメには、万年の寿命があると聞いている。がんばって、万年生きるんだよ」
と、カメに言うと、そのまま琵琶湖にはなしてやりました。
 こうして男は、手ぶらで家に帰ってきました。

「どうでした? 無事に魚を買う事は出来ましたか?」
 お嫁さんがたずねると、男は気まずそうに言いました。
「うん、その、・・・布はカメと取り替えて、カメの命を助けてやったよ」
「まあ、お前さんは・・・」
 お嫁さんはそれだけ言うと、悲しそうにうつむいてしまいました。

 そしてそれからいく日もたたないうちに、男は病気になって死んでしまいました。
 お嫁さんは泣きながら、男の亡きがらを近くの山崎(やまざき)というところにほうむりました。
 ところがそれから三日たって、そこを通りかかった一人の旅人が息を吹き返した男を見つけたのです。
 知らせを受けたお嫁さんはすぐに山崎へ走って行くと、道ばたに倒れている男を背中に背負って家に連れて帰りました。
 男はお嫁さんの介抱で、しだいに元気を取り戻しました。
 そしてある日、こんな事をお嫁さんに話して聞かせました。

「わたしが死んだとき、地獄の役人においたてられて、ひとつの役所の門に出た。
 門の前にはたくさんの人間たちが、しばられて転がっていた。
『わたしも、こんなふうにしばられるのか』
と、恐ろしさで震えていると、そこへ一人の小僧さんが出てきて、
『わしは、地蔵さまだ。お前はわしのために、恩をほどこしてくれたな。わしは命をもっている者にめぐみをほどこしてやろうと思って、湖のほとりでカメになっていたことがある。そのときお前はわしを買い取って、命を助けてくれた。本当に、良い行いをしてくれた』
と、言ってから、地獄の役人にむかって、
『この男を、すぐに助けてやれ』
と、言ってくれたのだ。
 そこで地獄の役人どもは、わたしを助けてくれた。
 すると小僧の地蔵さまは、またおっしゃった。
『お前は国に帰って、この後も必ず良い行いをつむがよい。そうすれば、きっと幸せになれる』
 ちょうどその時、二十歳ぐらいのきれいな娘さんが鬼にしばられてやってきたのだ。
 そこでわたしは、そっと娘に聞いてみたんだ。
『あなたは、どこの人かね?』
 すると娘さんは、泣きながら答えた。
『わたしは、筑前の国(くちぜんのくに→福岡県)の者でございます。今日、急に父母と別れて鬼におわれた者でございます』
 わたしはこれを聞くと、とても気の毒になって地蔵さまに申し上げたんだ。
『わたしは、もうだいぶ年を取りました。生き返っても、残りの命はいくらもございません。しかしあの娘は、まだ若くてこれから先が長いように思われます。どうかわたしの代わりに、あの娘を助けてやってください』
 すると地蔵さまは、こうおっしゃった。
『お前は、実にあわれみ深い男だ。わが身に代えて人を助けるなどということは、なかなか出来ることではない。お前のその立派な心に、感心した。だから特別に、二人とも助けてやる』
 その娘さんは泣きながら喜んで、帰って行ったよ」
 お嫁さんは話を聞き終わると、すっかり男のやさしさに感心しました。
 それからしばらくたって、男は地獄で会った娘さんをたずねてみたくなりました。
 そこで筑前の国に行って色々たずねてみると、筑前の国の大領(たいりょう→長官)の娘だということがわかりました。
 男はその家に行って、娘のことをたずねると、
「はい、あの娘は病気になって死にましたが、不思議なことに二、三日して生き返ったのです」
と、いうのです。
 そこで男は、
「あの世で会った男がたずねてきた」
と、伝えてもらいました。
 すると娘はびっくりして、転がるようにして出てきました。
 その娘は、確かにあの時の娘です。
 二人は互いに涙を流して、あの時の事を語り合いました。
 やがて男は近江の国へ帰ると地蔵さまの言う通りに良い行いをつんで、お嫁さんと二人で幸せに暮らしました。

おしまい

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