1月10日の百物語
むかしむかしの、寒い寒い北国でのお話です。 あるところに、茂作(しげさく)とおの吉という、 木こりの親子が住んでいました。 この親子、山がすっぽり雪に包まれる頃になると、鉄砲を持って猟に出かけて行くのです。 ある日の事、親子はいつもの様に雪山へ入って行きましたが、 いつの間にか空は黒雲におおわれて、吹雪(ふぶき)となりました。 二人は何とか、木こり小屋を見つけました。 チロチロと燃えるいろりの火にあたりながら、二人は昼間の疲れからか、すぐに眠り込んでしまいました。 風の勢いで戸がガタンと開き、雪が舞い込んできます。 そして、いろりの火が、フッと消えました。 「う~、寒い」 あまりの寒さに目を覚ましたおの吉は、その時、人影を見たのです。 そこに姿を現したのは、若く美しい女の人でした。 「雪女!」 茂作の顔に白い息がかかると、茂作の体はだんだんと白く変わっていきます。 そしてねむったまま、しずかに息をひきとってしまいました。 雪女は、今度はおの吉の方へと近づいてきます。 「たっ、助けてくれー!」 「そなたはまだ若々しく、命が輝いています。 やがて朝になり、目が覚めたおの吉は、父の茂作が凍え死んでいるのを見つけたのです。 ある大雨の日。 おの吉の家の前に、一人の女の人が立っていました。 「雨で、困っておいでじゃろう」 女の人は、お雪という名でした。 おの吉とお雪は夫婦になり、可愛い子どもにもめぐまれて、それはそれは幸せでした。 けれど、ちょっと心配なのは、暑い日差しを受けると、お雪はフラフラと倒れてしまうのです。 でも、やさしいおの吉は、そんなお雪をしっかり助けて仲良く暮らしていました。 そんなある日、針仕事をしているお雪の横顔を見て、 おの吉は、ふっと遠い日の事を思い出したのです。 「のう、お雪。 すると突然、お雪が悲しそうに言いました。 「あなた、とうとう話してしまったのね。あれほど、約束したのに」 「あなたの事は、いつまでも忘れません。 子どもを、お願いしますよ。 その時、戸がバタンと開いて、冷たい風が吹き込んできました。 そして、お雪の姿は消えたのです。 おしまい イラストレーターの夢宮 愛さんが、その後のお話しを描いています。 |
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