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3月15日の百物語
化け物にとられた魔除けの名刀
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むかしむかし、京の町に、腕の良い刀屋がいました。
梅雨時の、ある晩の事。
刀屋が注文先の屋敷へ刀を届けに行ったところ、刀の出来をとても気に入った主人が刀屋をごちそうでもてなしたので、帰るのがとても遅くなってしまいました。
帰ろうとする刀屋に、屋敷の主人は、
「雨も降っているし、近頃は化け物が現れるとのうわさだから、今夜は泊まっていきなさい」
と、言ったのですが、
「いや、今日は魔除けの名刀をたずさえてますから、何が出ようと、ご心配にはおよびません」
と、刀屋は屋敷を出ると、自分の店のある西の方角を進みました。
しばらく行くと、ある家の門の下で、一人の小坊主が雨宿りをしていました。
年は六つか七つくらいで、身なりはちゃんとしていますが、この雨で全身がびしょぬれです。
「おや? どこの小僧さんだ? かわいそうに、和尚さんにしかられて寺を飛び出したかな? よしよし、わしが寺まで送ってやろう」
刀屋がかさをさしかけると、小坊主は何も言わずに歩き出しました。
「これ、待ちなさい。そのまま雨に濡れては、風邪をひくぞ」
「・・・・・・」
刀屋が話しかけても、小坊主は一言も返事をしません。
でもやがて小坊主はふと立ち止まると、刀屋にゆっくりと顔を向けました。
「よかった、やっと止まってくれたか。・・・ひぇーっ!」
刀屋は、小坊主の顔を見てびっくりです。
なんと小坊主顔には、大きな目が一つしかなかったのです。
「一つ目小僧だー!」
そう言って刀屋は、気を失ってしまいました。
明け方になって、刀屋はやっと我にかえりました。
「はっ、そうだ、魔除けの名刀は? そしてここは、どこだ?」
まわりを探してみると、かさやちょうちんはそばに落ちていましたが、魔除けの名刀はどこにも見当たりません。
そして不思議な事に刀屋は西の方角へ歩いていたのですが、刀屋が倒れていたのは正反対の町の東のはずれだったそうです。
おしまい
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