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ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) >ひゃくものがたり(百物語) >六月
6月9日の百物語
百目
翻訳者 広東省恵州学院 陳曉鳯
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
むかしむかし、一人の商人が荷物を背負って、山道を急いでいました。
很久很久以前,有一个商人背着行李在山路上匆匆行走。
薄暗い山道の中に、商人の足音だけが響きます。
黑漆漆的山里,只回荡着商人的脚步声。
「うー、何だか薄気味悪い山だな」
“啊,这山阴森森的,感觉好恐怖啊。”
商人がビクビクしながら山道を進んでいると、ふと前に誰かが歩いていました。
商人提心吊胆地在山路上走着,突然看到前边有人。
「やれやれ、やっと道連れが出来たわい」
“哎呀,终于出现一个同行的人了”。
商人は急いで追いつくと、声をかけました。
商人一边追赶,一边喊道,
「何とも、おみ足のおはやい事で」
“您走得真快啊”。
「へえ」
“是”
振り向いた男は、両目を固く閉じた盲目(もうもく→目の見えない人)でした。
男子回过头来,原来是一位双目紧闭的盲人。
商人は、ふと思いました。
(目が見えんのに、つえも持たずに何であんなにはやく歩けるんじゃろう?)
商人突然想到,(男子)眼睛看不见,又没拄拐杖,为什么会走得这么快呢?
商人は盲目のあとを歩きながら、話しかけました。
商人一边跟上盲人的脚步,一边与他搭话。
「お前さんは、目が不自由の様ですのに、よくまあ、はように歩けますなあ」
“您虽然眼睛不太好使,但是走路的速度却相当了得啊”。
商人は話し相手が出来たうれしさに、村祭りで反物(たんもの→衣服)を売ってもうけた事、祭りの山車(だし→まつりなどで引く、飾りのついた車)が見事だった事など、聞かれもしないのにしゃべり続けました。
商人有了个可以说话的人,倍感高兴,继续说着村里节日售卖的服装、预备的花车等美好的事情,可谓是喋喋不休。
盲目は、ただ、
「ふんふん、ふんふん」
と、うなずくばかりです。
盲人只是点点头。
やがて山道は、ひどい石ころ道になりました。
很快,就来到了充斥着巨石的山路。
盲目は上手に石をよけながら歩いて行き、目の見える商人の方が、ついて行くのにやっとです。
盲人轻车熟路,而看得见的商人却走得颇为艰苦。
(まったく、なんて人だ。目が見えんのに、わしより早く歩くとは)
‘什么人啊,看不见却走得比我还快’
しばらくすると盲目が、ピタリと立ち止まりました。
刚走过这段路,盲人就恰巧停住了。
(やれ、小便でもする気かな)
‘哎呀,看来是想尿尿了’
商人が一息つこうとすると、盲目が実をかがめて言いました。
商人喘了一口气,盲人于是说道。
「ほう、こんなところにも、春が隠れておりますわい」
“看,即使是在这样的地方,也隐藏着春天的气息”
「へえ?」
“咦”
商人がのぞき込むと、草のかげに小さなスミレの花がありました。
商人看了一眼,原来是草丛里冒出了小小的紫色花朵儿。
(こやつ、目が見えんのに、どうしてこんな小さな花を。しかもこの日暮れに)
‘这家伙,不是看不见吗,怎么知道这有花,更何况现在已经是傍晚’
怖くなった商人は、作り笑いをしながら言いました。
商人觉得很恐怖,故意笑着说:
「お前さんは、よほど感の鋭いお方ですな。目の見えるわしでも、よく見えんのに」
“您,感觉好敏锐啊,即使是能看得见的我,也不能很清楚地看到这些花”。
「なあに、目が二つぐらいなくても、その気になれば何でも見えるもんですよ」
“有什么啊,即使是没有这双眼睛,那花香也是能感知得到的”。
盲目はそう言って、またどんどん歩き出しました。
盲人这样说了以后,就又开始行走了。
商人も仕方なく、あとからどんどんついて行きます。
商人没办法,只能跟在后头继续走。
日が落ちると、山の中は急に暗くなりました。
太阳落山了,山里一下就变得很黑。
そこで商人がちょうちんをともすと、それに気づいた盲目が言いました。
此时,商人点亮灯笼,并对盲人说小心行走。
「すまん事ですが、明かりをちょっと貸してもらえんでしょうか? わらじのひもを結びなおしたいんで」
“不好意思,借点光可以吗?我想系鞋带”。
「・・・? ・・・さあさあ、どうぞ」
“……?啊, 啊,可以,请”。
(目が見えないのに、明かりとは?)
‘即使看不见,也需要光亮?’
商人は不思議に思いながらも、盲目の足元にちょうちんを差し出しました。
商人一边觉得不可思议,一边把灯笼探向盲人的脚边。
そして盲目が着物のすそをまくりあげたとたん、商人は、
「ウヒャーー!」
と、叫んで、腰を抜かしてしまいました。
然后,正当盲人把衣角卷起的时候,商人“哇”地一声叫到,直不起腰了。
何と盲目のひざから足元にかけて、ギラギラと光る目玉が百もついていたそうです。
为什么盲人从头到脚,好像有一百双眼睛在闪闪发光啊。
おしまい
结束
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