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ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) >ひゃくものがたり(百物語) >七月
7月16日の百物語
火の車
冒火的板车
翻訳者 広東省恵州学院 葉邁
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
むかしむかし、あるところに、又吉(またきち)というならず者がいました。
很久很久以前,在某个地方,有一个叫又吉的恶棍。
若い頃からのならず者で、けんかや賭け事はもちろんの事、時には借金取りの用心俸(ようじんぼう)になって、寝ている病人のふとんまではぎ取ったそうです。
他从小就品行很坏,打架赌博是常有的事,有时候会去帮人收债,听说他甚至会从病人被窝里抢钱。
しかしその又吉も今ではすっかり年を取って病気になり、一人娘の家で暮らしていました。
但是,现在又吉已经上了年纪,生病了,就住在了自己唯一的女儿的家里。
又吉の娘は近所でも評判のやさしい娘で、一生懸命に又吉の面倒を見ていました。
街坊邻里都对他的女儿赞不绝口,他的女儿也在尽心尽力地照顾着他。
ところが又吉の体は、日に日に弱っていきます。
尽管如此,又吉的身体还是一天天地衰弱下去。
医者から、
「いよいよ、今夜が峠だ」
と、言われた日の夜、家のすぐ近くに人魂(ひとだま)が現れました。
医生说:“终于到了,今晚是决定生死的时刻。”在医生说出这些话的这晚,在家里的周围出现了鬼火。
それを見た近所の人たちは、
「不吉な事が、起きなければいいが」
と、ビクビクしていました。
看到这个现象的邻居们都想着不发生什么不吉利的事情就好了,非常害怕。
真夜中頃、又吉の具合が急に悪くなりました。
到了半夜,又吉的身体状况突然变差。
驚いた娘は、すぐに医者を呼びました。
又吉的女儿吓坏了,立刻叫来了医生。
医者は難しい顔をして、又吉の手の脈をとりました。
医生面露难色,为又吉把脉。
「いかんな、心臓がひどく弱っている。・・・だが、今夜を頑張れば、まだしばらくは持つだろう」
“不行了,心脏跳动得很弱。但是,如果能撑得过今晚的话,还能支撑多一段时间。”
ところがその時、家の外が急に明るくなったかと思うと、火の車を引く赤鬼が現れたのです。
但这时,正疑惑着外面怎么突然变亮时,驾着冒火的板车的红鬼出现了。
赤鬼は家の中に入ってくると、驚いて逃げようとする又吉を抱き上げて火の車に乗せました。
红鬼进到家里,把惊慌失措想要逃跑的又吉,抱上了冒火的板车。
「いやだ! まだ死にたくない!」
“不要啊,我还不想死!”
又吉は、どこにそんな力があったのかと思うくらいの大声で泣き叫びました。
又吉不知道哪来的力气,在大声地喊叫。
又吉の娘も、泣きながら手を合わせて頼みました。
又吉的女儿也一边哭一边合着手掌央求着。
「お願いです! どうか父を、連れて行かないでください!」
“求你了,请不要带走我的父亲。”
あまりの出来事に、医者はただ、おろおろするばかりです。
没有遇到过这么离奇的事情的医生也只是在旁边怕得哆哆嗦嗦。
赤鬼は娘と向かい合うと、こう言いました。
红鬼对着又吉的女儿这样说道:
「こやつの罪は、死んだからと言って償える物ではない。罪を償うには、生きたまま地獄の苦しみをあじあわねばならん」
“这家伙犯下的罪,不是用死就能赎回来的。为了赎罪,只能让他活着去承受地狱之苦。”
そして赤鬼の引く火の車は又吉を乗せたまま、はるか東の空へ登って行ったという事です。
于是红鬼驾着冒火的板车,载着又吉,向着遥远的东方的天空驶去了。
おしまい
結束
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