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福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 8月の江戸小話 > 化け物
8月3日の小話
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化け物
夏の晩の事でございます。
暑くなりますと背筋がぞーっとするようなお化けの話がはやるもので、今夜も長屋(ながや)の若い者が五、六人集まって、お化けの話をしようということになりました。
明かりをいっぱいつけ、一つ話したら明かりを一つ消してゆきます。
明かりがすべて消えますと、化け物が出てくると言われています。
さて、明かりが最後の一つきりになったころ、誰もがおそろしくなって話そうとしません。
「ごんべえ、お前が話しをして明かりを消せ。これじゃあ、夜が明けてしまうわ」
「まあ、待て待て。いま、小便をしてからな」
ごんべえが戸の外に出ると、おどろいたことに、おそろしげな化け物が、
「まだか、まだか。明かりを全部消したら出て行ってやろうと待っているのに、いつまで待たせるんだろう」
と、大あくびをしていました。
おしまい
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