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3月19日の日本民話
ブッポウソウの声
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むかしむかし、土佐の国(とさのくに→高知県)に、たいさくと言うとんちの上手な人がいました。
ある日、たいさくは町に出かけて、こんな事を言いふらしました。
「わしらの山にはブッポウソウと言う珍しい鳥がいて、それがまことに良い声で鳴くんだよ」
するとその話が、お城の殿さまの耳にも届いたのです。
「ほう。このあたりにも、ブッポウソウがいるとは知らなかった。ぜひ一度、鳴き声を聞いてみたいものだ」
殿さまが言うと、家来(けらい)たちが言いました。
「ですが殿。たいさくと言う男が住んでいるあのあたりの山には、道らしい道がございません。山に入る事は、とうてい無理にございます」
「そうか。しかし道がなければ、道をつくればよいではないか。そうであろう」
「ははーっ! まことにその通りでござます」
そこで家来たちは、さっそく山に道を開きました。
「では、まいるとしよう」
殿さまはカゴに乗ると、大勢の家来と山に出かけました。
ところが山で鳴いているのはブッポウソウではなく、野バトばかりです。
殿さまはカンカンに怒って、たいさくを城に呼び出しました。
「これ、たいさく。お主が住んでいる山に行ったが、ブッポウソウの声など聞こえんではないか」
するとたいさくは、不思議そうな顔で言いました。
「おかしいですね。確かに山では、♪デデポッポゥ、♪デデポッポゥと、鳴いているのですが」
「バカ者! それは野バトじゃ!」
「ありゃ、そうでしたか。わしはてっきり、あれがブッポウソウの声かと思いました。しかし、さすがにお殿さまは物知りですな、あははははははっ」
「笑い事ではないわ!」
たいさくはきつく叱られましたが、でも殿さまが山に道をつくってくれたおかげで、村のみんなは山仕事が楽になったと大変喜んだそうです。
おしまい
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