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4月29日の日本民話
山びこになった男の子
鹿児島県の民話 → 鹿児島県情報
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むかしむかし、あるところに、男の子がいました。
男の子はお父さんとお母さんの三人で暮らしていましたが、お母さんが病気になって死んでしまいました。
そこでお父さんが男の子のために新しいお母さんをもらう事にしたのですが、この新しいお母さんがとても意地悪な人で、毎日たくさんの仕事を言いつけて男の子を困らせるのです。
ある日、お母さんが男の子に言いました。
「山へ行って、つる草を取って来い!」
つる草と言うのは、ほかの木にまきつく草の事です。
男の子は山へ行って、色々なつる草を取って家に帰りました。
ところが、お母さんは、
「このマヌケ! わたしが取って来いと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
と、男の子を山へ追いかえしました。
男の子は暗くなるまで山の中を歩きまわり、前よりもたくさんのつる草を持って帰りました。
それでもお母さんは、
「このマヌケ! わたしが取って来いと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
と、せっかく取って来たつる草をみんな捨ててしまうのです。
それからも男の子は、毎日毎日山へ行ってつる草を取りました。
でも、どんなつる草を持って帰ってもお母さんは、
「このマヌケ! わたしが取って来いと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
と、男の子を山へ追いかえします。
(どうして? どうしてお母さんは、こんな仕事ばかり言いつけるの?)
悲しくなった男の子が山の中で泣いていると、まっ白な髪を長くたらしたおじいさんがやって来て尋ねました。
「どうした? なぜ泣いているのかね?」
そこで男の子は、これまでの事をくわしく話しました。
すると、おじいさんが言いました。
「よし、よし、そんなお母さんのところへなんか、もう帰らなくてもいいよ。今日からお前を、山の神さまにしてあげよう」
おじいさんはそう言って、男の子を山びこにしてくれたのです。
山びこになった男の子は、毎日、山の中を走りまわり、人の言葉をまねたり、イタズラをして遊ぶようになりました。
山に向かって、
「ヤッホー!」
と、言ったら、
「ヤッホー!」
と、返事をする山びこです。
山の道を歩いていて突然バラバラと砂が降って来る事がありますが、これも山びこのしわざなのです。
また、山で働く木こりが木を切っていると、ふいに後ろから、
メシッ、メシッ
と、木の倒れる音もおこす事もあります。
(なんだ、また山びこのイタズラだな)
そこで、山びこになった男の子を知っている木こりが言いました。
「山びこよ。イタズラをするのはおよし。せっかく山の神さまにしてもらったのに。また、あのお母さんのところへ帰りたいか?」
すると山びこはむかしの事を思い出して悲しくなり、すぐにイタズラをやめるのだそうです。
おしまい
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