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6月27日の日本民話
身投げ石
大分県の民話 → 大分県情報
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むかしむかし、豊後の国(ぶんごのくに→大分県)に、岡の殿(おかのとの)という豪族(ごうぞく)が住んでいました。
岡の殿には美しい姫がいましたが、姫が重い病にかかってしまったのです。
「姫を、何としても治せ!」
岡の殿は家来たちに命令しましたが、しかしどんな薬をあたえても姫の病気には効かないのです。
姫の病気は、日に日に悪くなるばかりでした。
そんな、ある日の事。
どこからか一人のお坊さんがやって来て、岡の殿に言いました。
「不治(ふじ)の病には 黒い花の咲(さ)くユリの根を煎(せん)じて飲ますとよいと聞きおよびます。しかしそのようなユリの花が、どこにあるのやら」
それを聞いた岡の殿は、あちこちにおふれを出しました。
《黒い花の咲くユリの花を探し出した者には、姫を嫁にとらす。一刻(いっこく)も早く探し出せ》
それを読んだ人たちは草の根を分けるようにして探しましたが、けれども黒い花の咲くユリを見つけることは出来ませんでした。
「ええい、どこを探しておる。もっとよく探せ!」
しかしやっぱり、どこにも見つかりません。
屋敷の人々があきらめかけたとき、岡の殿が可愛がっていた栗毛(くりげ)のウマが激しくいなないて、屋敷にかけ込んできたのです。
そのウマの口には、なんと黒いユリの花が一本くわえられていました。
岡の殿は夢中で栗毛にまたがると、栗毛は矢のようにかけ出しました。
そしていくつもの山をこえた栗毛は、やがて深い谷で止まりました。
そこの岩間には、黒いユリの花が何本も咲いていたのです。
「あった、見つけたぞ。これで姫が助かる」
それからほどなくしてユリの根を煎じて飲んだ姫は、元気になっていきました。
さて、黒い花の咲くユリを見つけてきた者には姫を嫁にやるという約束でしたが、相手がウマではどうしようもありません。
ところが栗毛はその約束を知っているのか、いつも姫に寄りそって姫の側を離れようとしないのです。
岡の殿も姫も気味悪くなり、栗毛をウマ小屋に閉じ込めてしまいました。
しばらくして、姫は病気全快のお礼参りに八幡宮(はちまんぐう→八幡神を祭神とする神社の総称)へ出かけました。
ところがカゴにのって帰る途中、ウマ小屋から逃げ出した栗毛が狂ったように姫の行列めがけて走ってきたのです。
「あっ、あぶない!」
「姫のお身を守れ!」
お供たちが姫を守ろうとしましたが、栗毛はお供たちを蹴散(けち)らすと、とうとう姫を川に突き出た大きな岩の上に追いつめてしまったのです。
岩の下では川の濁流(だくりゅう)が、ゴウゴウ音をたてて流れています。
栗毛の目は怒りに燃えており、姫に一歩一歩近づいていきます。
「いやじゃあ!」
姫は叫び声をあげましたが、栗毛は姫を道連れに川へ身を投げたのです。
それからその大岩は『身投げ石』と呼ばれるようになり、今でも栗毛のひづめの跡を残しているそうです。
おしまい
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