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10月1日の日本民話

ピントコ坂

ピントコ坂
長崎県の民話長崎県情報

日本語 ・日本語&中国語

 長崎の小島(こしま)から茂木(もぎ)へと続く道に、『ピントコ坂』と呼ばれる急な坂があります。
 何でも、中国の何旻徳(かびんとく)という人の名前がなまって、『ピントコ坂』とつけられたそうです。
 このびんとくさんという人は、もともと中国の杭州(こうしゅう)に住んでいました。
 びんとくさんには、柳氏(りゅうし)という美しい許嫁(いいなずけ)がいましたが、どんな事情からか、その娘を国の大守(たいしゅ→大名)に奪われてしまい、それ以来、中国に住むのが嫌になったびんとくさんは、貿易をしている叔父さんを頼って長崎に渡ってきたそうです。
 ある年の正月、友だちに誘われて、びんとくさんは丸山(まるやま)の盛り場を歩いていました。
 くるわの石畳を通って筑後屋(ちくごや)という店の前まで来たとき、ふと、店に座っている一人の遊女(ゆうじょ)に目をやったびんとくさんは、
「あっ!」
と、声をあげたまま、その場に釘付けになってしまいました。
 驚いた事に、その女は許嫁だった柳氏(りゅうし)に瓜二つだったのです。
 それからというもの、びんとくさんは毎日のように、その女のもとへ通い続けるようになったのです。
 登倭(とわ)というその女も、びんとくさんが好きになりました。
 さて、当時の長崎の町では、大量の偽金が出回っていました。
 そして、本当かどうかはわかりませんが、
「あの偽金は、中国人が作った物だ」
と、うわさが広まって、たくさんの中国人が捕まったのです。
 そして、びんとくさんまでもが、捕まってしまいました。
 何でも、登倭(とわ)に思いを寄せる町役人が、恋敵のびんとくさんを罪人におとし入れたという事です。
 とうとう、びんとくさんは、偽金作りの汚名をきせられたまま、処刑されてしまいました。
 残された登倭は、びんとくさんの遺体をもらい受けると、泣く泣く今の小島の坂の途中に手厚く葬ってやり、そうして自分もその場で自害して果てたと言われています。
 その塚は傾城塚(けいせいづか→おいらんの墓)と呼ばれ、今もこの坂の上にひっそりと立っているそうです。

おしまい

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