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10月17日の日本民話
鳥追いの森
鹿児島県の民話 → 鹿児島県情報
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むかしむかし、鹿児島県北西部の川内(せんだい)に、日暮らし長者という大変なお金持ちが住んでいました。
この長者には美しい妻と二人の子どもがいて、二人の子どものお姉さんはお北(きた)、弟は花若丸(はなわかまる)という名前です。
この長者の家には左近充(さこんじゅう)という男が働いていましたが、どういうわけか長者の妻の悪口を言うのです。
それがいかにも本当らしく言うので、それを信じた長者は妻を実家に返してしまいました。
それから間もなく長者は左近充の世話で新しい妻を迎えたのですが、今度の妻はとてもいじわるな人で、血のつながっていないお北と花若丸をいつもいじめていたのです。
ある日、長者は仕事で、京都へ行く事になりました。
「しばらく帰って来られないが、子どもたちをよろしく頼むよ」
「はい、旦那さま」
ところがその間に継母(ままはは)と左近充はぐるになって、長者の家も財産も全部自分たちの物にしてしまったのです。
それからというもの、お北と花若丸へのいじめは前よりもいっそうひどくなりました。
朝から晩まで二人を休みなく働かせ、秋になってイネが実ると一日中、鳥の群れを追い払う仕事をさせました。
お北と花若丸は小さな舟にのせられて、鐘やたいこを叩いては川を上ったり下ったりして鳥を追い払うのです。
幼い二人には、とてもつらい仕事でした。
二人はいつも、
「母さまが、いてくれたら」
「父さま、早う帰ってきて」
と、泣きながら烏を追い払いました。
でも京都へ行った父親は、なかなか帰ってきません。
継母と左近充の毎日のいじめに絶えられなくなった二人は、
「母さま、父さま、わたしたち、もう疲れました。ごめんなさい」
と、しっかりと手をつないだまま、川に身を投げて死んでしまったのです。
「まだ小さいのに、かわいそうな」
あわれに思った村人たちは、二人の亡骸(なきがら)を川の近くに手厚く葬ってやりました。
それから間もなく、長い旅からようやく長者が帰って来たのです。
しかし帰ってみれば二人の子どもはおらず、家と財産は左近充と妻の物になっています。
「なぜ、こんな事に! 子どもたちは!」
「長者さま。実は・・・」
村人からすべてを聞いた長者は、左近充と妻を刀できり殺しました。
そして二人の子どもが葬られた、川のほとりに腰をおろすと、
「すまんかった。金もうけに夢中で、帰るのが遅くなったばかりに。・・・お北。・・・花若丸。今から父も、お前たちのそばへ行くぞ」
と、長者も自らの命を絶とうとしたその時、長者の耳に二人の子どもたちの声が聞こえてきたのです。
『父さま。お帰りなさい。わたしたちは、木に生まれ変わったの。どうか、わたしたちの木を育てて』
その声に目を見開いた長者は、川のほとりに二本のタブの木(→クスノキ科の常緑高木)が生えているのを見つけました。
「そうか。お前たちは、木になったのか。よし、父が必ず、お前たちを立派に育ててやるぞ」
やがて二本の小さなタブの木はどんどん大きくなり、二本が四本に、四本は八本にと、木から林に、林から森になりました。
村人たちは死んだ二人の子どもの事を思い出して、この森を『鳥追いの森』と呼び、小さな観音さまをたててやったそうです。
この森は太平洋戦争の爆弾で焼けてしまいましたが、観音さまは今でも残っているそうです。
おしまい
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