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6月2日の日本の昔話
一人になった鬼の親分
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
【大人も眠れる睡眠朗読】日本昔ばなし12 とんち集 元NHKフリーアナ 絵本読み聞かせ
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投稿者 「ひつじも眠る朗読チャンネル」 【眠くなる女性の声で読み聞かせ】おやすみ前の日本昔話集
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制作 : 妖精が導くおやすみ朗読チャンネル
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投稿者 「眠りのねこカフェ」
むかしむかし、鬼神山(おにがみやま)という山に二匹の鬼の親分が住んでいて、それぞれが大勢(おおぜい)の子分(こぶん)をひきつれていました。
親分同士の仲がよく、これまでけんかをした事がありません。
ところがある日、二匹の親分が一緒に酒を飲んでいる時に片方の親分が、
「お前の子分よりも、わしの子分の方がずっと元気がええ」
と、言いました。
それを聞いたもう一人の鬼の親分が、顔を真っ赤にして言い返しました。
「何を言うか! わしの子分の方が、お前の子分よりもずっと元気がええわい!」
「なんだと!」
「なんだとは、なんだ!」
「やる気か!」
「ああ、やってやるぞ!」
二匹の鬼の親分が、同時に立ち上がりました。
でも、二匹の鬼の親分の力は同じです。
けんかをすれば、両方とも無事ではすみません。
そこで片方の鬼の親分が、もう片方の鬼の親分に言いました。
「おれたちがけんかをすれば、両方とも死んでしまうかもしれん。
そうなれば、子分たちのめんどうを見るやつがいなくなる。
ここはけんかでなく、他の事で勝負をつけないか?」
「なるほど、お前さんの言う通りだ。それなら、あのけわしい谷の上に石の橋をかけるというのはどうじゃ?」
「それは、おもしろい。
よし、日がくれたら仕事の開始じゃ。
朝までに石の橋をかけ、どっちの橋がよく出来ているか、わしとお前で見てまわろう」
「わかった。
もし、わしの方が負けたら、お前の弟分(おとうとぶん)になるとしよう。
その反対にわしの方が勝ったら、お前が弟分になるんだ」
「いいとも。決まりだ」
二匹の鬼の親分は、さっそく子分たちのところへ行って、この事を話しました。
さて、日が暮れると同時に、どっちの鬼たちも石の橋をつくりはじめました。
「しっかりとがんばれ。負ければ、あっちの親分の家来にされてしまうぞ」
二匹の鬼の親分は、必死(ひっし)で子分たちを追いたてます。
静かだった鬼神山は、まるで戦(いくさ)の様な騒ぎです。
ところが片方の橋はどんどん出来上がっていくのに、もう片方の橋はなかなか仕事がはかどりません。
東の空が白くなる頃、谷の上に一つの見事な橋が出来上がりました。
でももう一つの橋は、まだ半分というところです。
負けた鬼の親分が、勝った鬼の親分に言いました。
「どうやら、わしらの負けのようだ。約束通り、今日からわしはお前の弟分になろう」
それからというもの鬼神山の鬼の親分は一人になり、その下に大勢の子分をしたがえるようになったのです。
おしまい
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