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11月17日の日本の昔話
こわれたせともの
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
むかしむかし、あるとうげに、人をだますキツネがいました。
ある日、このとうげを通りかかったせともの売りのおじいさんが、せとものもお弁当も取られてトボトボ家に帰りました。
おじいさんからこの話しを聞いた息子は、
「じいさんのかたきは、おれが取ってやる!」
と、次の朝、せとものをかついでとうげにむかいました。
するとキツネが木のかげで、落ち葉をおでこにつけて人間の娘に化けるところを見つけました。
(あいつが、じいさんをだましたキツネだな)
息子がそのまま知らん顔で道を歩いていくと、キツネが化けた娘が声をかけてきました。
「あの、すみませんが、のどがかわいてこまっております。お水を、お持ちではありませんか?」
「ああ、持っているぞ。おれもちょうど休むところだから、よければ一緒に弁当を食わねえか?」
息子は荷物をおろすと、お弁当を広げて娘にもすすめました。
「はい、ありがとうございます」
娘がゆだんしてお弁当に手を伸ばしたその時、息子はいきなり娘の手をねじりあげて、
「じいさんのかたきうちだ!」
と、荷物をつり下げるてんびん棒で、娘をうちすえました。
するとキツネは正体を現して、
「グシャン、グシャン、グシャン、グシャン」
と、泣きさけびます。
「泣いたって、かんべん出来るもんか!」
息子がさらにうちかかると、通りかかった人が声をかけてきました。
「せともの屋さん、さっきからせとものをうちこわして、どうするつもりです?」
「へっ? せとものをこわしている? 違いますよ、悪いキツネをこらしめているんですよ。ほら、・・・へっ?」
よく見ると息子がキツネだと思っていたのは自分の商売道具のせともので、キツネの泣き声はせとものがわれる音だったのです。
「だっ、だまされた・・・」
息子はガックリと肩をおとして、トボトボと家に帰って行きました。
おしまい
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