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 6月23日の小話 
 出来心   バカな泥棒もいたもので、ひどく貧乏な家に忍び込みましたが、押し入れにも床下にも何もありません。「まったく、ひどい家だな。こんなに何もない家は、見たこともないわ」
 泥棒がぶつぶつ言いながら盗む物を探していると、せんべいぶとん(→わたの少ない、安物ふとん)にくるまって寝ていた男が目を覚まして、
 「泥棒、泥棒だー!」
 と、騒ぎ出しました。
 泥棒があわてて物陰に隠れると、男はあたりを見回して言いました。
 「泥棒め、よくも盗みおったな。金も着物も何もないではないか。うーん、これでは家賃を払うことが出来ん。さっそく、大家に報告しなくては」
 それを聞いた泥棒は腹を立てて、物陰から飛び出してくると男に怒鳴りました。
 「やいやい! ありもしない物を盗まれたなどと、よくも言えたものだ! てめえ、『うそつきは泥棒の始まり』という言葉を知らねえのか!」
 すると男はびっくりして、泥棒に土下座(どげざ→地面に手足をついてあやまること)して謝りました。
 「すみません、すみません。ほんの出来心なんです」
 これでは、どちらが泥棒かわかりませんね。
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
   
 
 
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