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12月24日の世界の昔話
三つの願い
フランスの昔話 → フランスの国情報
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
むかしむかし、ある町はずれに、小さな料理屋がありました。
この料理屋の夫婦はお金持ちではありませんが、毎日の食べる物には不自由せず、健康にもめぐまれて幸せに暮らしていました。
ある日の夕方、金ピカの服を着た伯爵(はくしゃく)と伯爵夫人(はくしゃくふじん)が、金の馬車(ばしゃ)に乗って料理屋の前を通りました。
それを見て、おかみさんが言いました。
「あの人たちみたいに、わたしも一度でいいからすてきなボウシをかぶり、耳かざりをして馬車に乗ってみたいものだわ」
すると、主人も言いました。
「そうだな。何をするのにも召使いに手伝ってもらえば、言う事はないね」
「そうなれば、どんなにいいだろうね」
「ああ、そうなりたいね」
二人はそんな事を言っているうちに、自分たちの生活が急にみすぼらしく思えてきました。
おかみさんは、ため息をつきながらつぶやきました。
「こういう時に、仙女(せんにょ)がいてくれたらねえ。仙女が魔法のつえをひとふりすれば、どんな願いでもかなうと言うじゃないか」
そう言ったとたん、家の中にサッと光が差し込んで美しい女の人が現れたのです。
「せっ、仙女さま?」
「おい、本当に仙女さまが来てくださったぞ!」
よろこぶ二人に、仙女が言いました。
「あなたたちの話は、みんな聞きました。
これでもう、不満を言う必要はありませんよ。
今からあなたたちに、三つの願い事をかなえるチャンスをあげます。
願い事を口でとなえれば、それだけで願い事がかないます。
ただし、願い事の取り消しは出来ませんよ 」
仙女はそう言うと魔法のつえをひとふりして、スーッと消えました。
「おい、お前。今のを、聞いたか?!」
「ええ、確かに聞きましたよ。願い事が、それも三つもかなうんですって」
「えへヘへへ。やっと、運が向いてきたな。三つの願い事か。ここはあわてず、しんちょうに考えないとな」
「お前さん、願い事は何にする?」
「そうだな、やっぱり一番の願いは、長生き出来る事だな」
「でもお前さん、長生きしたって、働く毎日ではつまらないよ。願い事は何と言っても、お金持ちになる事だよ」
「それもそうだ。大金持ちになりゃ、たいていの願い事はかなうからな」
二人はあれこれ考えましたが、なかなか良い願い事が思いつきません。
「お前さん、あせっても良い考えはうかばないよ。今夜一晩、じっくり考えようよ」
「そうだな、あせる事はないな」
こうして夫婦は、いつものように仕事にとりかかりました。
しかしおかみさんは台所仕事をしていても、三つの願い事が気になって仕事がすすみません。
主人の方も願い事が気になって、仕事がすすみません。
長い一日が終わって夜になり、二人はだんろのそばに腰をおろしました。
おかみさんはだんろの赤い火を見ながら、思わずつぶやきました。
「この火でソーセージを焼いたら、きっとおいしいだろうね。今夜は願い事の前祝いに、一メートルもあるソーセージでも食べてみたいね」
おかみさんがそう言ったとたん、天井から一メートルの大きなソーセージが落ちてきたのです。
「えっ、うそ! 今のはなしよ!」
おかみさんはあわてて言いましたが、願い事の取り消しは出来ません。
これで願い事は、残り二つです。
すると主人が、おかみさんに怒鳴りました。
「このまぬけ! お前の食いしん坊のおかげで、大事な願い事が一つへってしまったぞ! 何てもったいない! こんなソーセージなんか、お前の鼻にでもぶらさげておけ!」
主人がそう言ったとたん、ソーセージがおかみさんの鼻にくっついてしまいました。
「しっ、しまった!」
主人はあわててソーセージを引っ張りましたが、おかみさんの鼻にくっついたソーセージはどうしてもとれません。
これで願い事は、残り一つです。
鼻にソーセージをくっつけたおかみさんは、大声で泣き出しました。
「あーん、こんなみっともない姿じゃ、どこにも行けないわ!」
それを見て、主人が言いました。
「泣くんじゃない! それよりも願い事をむだ使いする前に、最後の願いを言ってしまうおう。ここはやっぱり、大金持ちにしてもらおうじゃないか」
するとおかみさんが、泣きながら言いました。
「おだまり! 最後の願いは決まっているよ! どうぞ、このソーセージが鼻から取りますように!」
そのとたん、ソーセージは鼻から取れて床に転がりました。
「ああっ、最後の願い事が・・・」
主人はがっかりですが、おかみさんは鼻からソーセージが取れて一安心です。
おかみさんはソーセージをひろうと、だんろの火で焼きながら言いました。
「くよくよしても、仕方がないよ。それより晩ご飯は、ソーセージだよ。おいしそうだね」
「・・・ああ、おいしそうだな」
それから二人は二度と不満を言わず、今の暮らしを大切にしたということです。
おしまい
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