寅年特集 2022年 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
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トラのお話し 第 4 話

トラから坊さんを助けた山犬

トラから坊さんを助けた山犬
インドの昔話インドの情報

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
虎の顔の折り紙とらのかお   犬の顔の折り紙いぬのかお

♪音声配信(html5)
朗読者 : スタヂオせんむ

 むかしむかし、一匹の悪いトラが、オリの罠にかかりました。
「助けてくれー! 外に出してくれー!」
 トラが騒いでいると、そこへ坊さんが通りかかりました。
 トラは、やさしい声で坊さんにお願いしました。
「お坊さま。どうかわたしを、ここから出してください」
 すると坊さんは、首を振って言いました。
「駄目だよ。お前は外に出たら、また悪い事をするだろう?」
「とんでもない。わたしは心優しいトラです。それに、助けていただいたご恩は一生忘れません。わたしはあなたの召使いになって、一生お仕えします。ですから、お願いです!」
 トラが泣いて頼むので、坊さんはトラが可愛そうになりました。
「お前は、それほど悪い奴ではなさそうだな。・・・よし、そこから出してやろう。その代わり、二度と悪い事をするんじゃないよ」
 こうしてオリから出してもらったトラは、お腹をかかえて笑いました。
「ワハハハハハッ。バカな坊さんだ。トラの言葉を信じるなんて。わたしはお腹がペコペコなんだ。どれ、あんなをごちそうになろうかな」
 坊さんは、ビックリして言いました。
「ま、待ってくれ。助けてやったわたしをこんな目に合わせる事が、良い事か悪い事か、みんなに聞いてみるから。その間だけ、わたしを食べないでいておくれ」
 坊さんはそう言うと、すぐそばにあった大きなぼだいじゅの木に尋ねました。
 ところが、ぼだいじゅの木は、
「わたしなんか、いつもそんな目に合っていますよ。疲れた旅人に木かげを貸してあげているのに、旅人はわたしの枝や葉をちぎってしまうのですから。良い事をしても、ひどい目に合うものです」
と、言って、トラの味方をしました。

 ガッカリした坊さんは、今度は水牛に尋ねました。
「それはお気の毒に。でも、わたしをごらんなさい。みんなはわたしがミルクを出すうちは、喜んでたくさんのエサをくれますが、ところがミルクが出なくなったとたんに、ろくにエサをくれないのですよ。良い事をしても、ひどい目に合うものです」
 この水牛も、トラの味方です。

 ガッカリした坊さんは、今度は地面の道に尋ねました。
 すると道は、苦々しく言いました。
「良い事をしたからって、お返しを望むのは無理ですよ。わたしをご覧なさい。貧しい人でも、お金持ちでも、わたしは区別をせずに通してあげているのに、人がわたしにくれる物といったら、ゴミとか、つばとか、タバコの灰ぐらいのものですよ。良い事をしても、ひどい目に合うものです」
 道も、トラの味方です。

「ああ、もう駄目だ。誰もわたしの味方をしてくれない」
 坊さんは、悲しくなりました。
 ちょうどその時、通りかかった山犬が不思議そうに尋ねました。
「お坊さん。どうしたのですか?」
「実は、わたしはもうすぐ、トラに食べられてしまうのだよ」
「へえ。どうして?」
 坊さんは、山犬にわけを話して聞かせました。
「それは不思議な話だなあ。なんだか、さっぱりわからないや」
 山犬は、頭を傾げるばかりです。
 そこで坊さんは、もう一度、話を聞かせてやりました。
「ああ、ますますわからないや。右の耳から話が入ると、左の耳から抜けてしまうよ」
 山犬は左耳を押さえると、坊さんに言いました。
「そうだ。そのトラのところに行ってみましょうよ。そうしたら、わけがわかるかもしれない」
 そこで坊さんと山犬が戻ってみると、トラはツメとキバをとぎながら、坊さんを待っていました。
「ずいぶんと遅いじゃないか。さあ、早く食わせろ!」
 坊さんは、ガタガタと震えながら頼みました。
「もうちょっとだけ待ってくれ。この山犬が、どうしても話がわからないって言っているんだ」
「馬鹿な山犬め。まあいい。ごちそうは目の前にあるんだしな」
 坊さんは、なるべく長生きをしたいので、山犬に細かいところまで残らず話してやりました。
 すると山犬は、大げさに叫びました。
「そうか! わかったぞ! 何だ、こんなに簡単な事だったのか。つまりえーと、お坊さんがオリの中にいた。そこをトラが通りかかったんですね」
「馬鹿者! このわたしがオリの中にいたんだよ」
 トラは、あきれて言いました。
「ああ、そうでした。このわたしがオリにいたんだ。いや違う、このわたしっていうのは坊さんの事ですね。お坊さんがオリにいて、トラが外を通りかかったと」
「違う! わたしっていうのは、このわたしの事だ。分からず屋め、こうなったら、分かるまでとことん話してやるぞ」
「はい、お願いします」
「いいか、よく聞けよ。ここにいるわたしは、トラさまだ」
「はい、トラさま」
「これが、坊さんだ」
「はい、坊さん」
「そしてこれがオリ。このオリの中にいたのは、このトラさまだ」
「なるほど、トラさまの中にいたのは、このオリですね」
「このマヌケ! どうやったら、オリがわたしの中に入るのだ!」
「そ、そんなに怒らないでくださいよ。だいたい、最初の最初がどうなっていたか、わからないからいけないんですよ。えーと、トラさまはどうやって、このオリに入ったんですか?」
「どうやってだって? そうだなあ。何気なく入ったと思うよ」
「何気なくとは、どういう事ですか?」
 するとトラは、オリの中へ飛び込んで見せました。
「大馬鹿者め。何気なくとは、こういう事だ」
「なるほど。それで、オリにはこの様にカギが閉まっていたのですね」
 山犬はそう言うと、オリの戸のカギを閉めてしまいました。
「そうだ。この様にオリが閉まって、出られなく・・・。あっ、しまった! この山犬め! よくも引っかけたな!」
 こうしてトラは、おとぼけのうまい山犬に閉じ込められて、もう二度と外には出られませんでした。

おしまい

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